フーシ派なぜ参戦? 「もう一つの海峡」が火種になる可能性
米国・イスラエルとイランの戦闘開始から28日で1カ月となる中、これまで沈黙を保ってきたイエメンの親イラン武装組織フーシ派が米イスラエルへの攻撃を宣言した。なぜ今、フーシ派は参戦を決めたのか。
「攻撃はイランやレバノンなどの抵抗勢力を支援するためだ。すべての戦線に対する攻撃が停止するまで、我々の攻撃は続く」。フーシ派は28日朝、イスラエルに向けてミサイルを発射したことを認めた後、こう宣言した。ロイター通信などによると、その後フーシ派の報道官はテレビ演説で、28日朝の1回目の攻撃から24時間以内に、巡航ミサイルと無人航空機(ドローン)でイスラエルの複数の軍事拠点を攻撃したと表明した。イスラエルメディアは、軍が迎撃したとしている。
フーシ派は、イランが中東各地で築いてきた反米・反イスラエルのネットワーク「抵抗の枢軸」の一角を占める。もともとイエメン北部の山岳地帯を拠点にする武装組織だったが、2015年には首都サヌアを掌握し、現在はイエメンの北部一帯を実効支配している。
フーシ派は、23年10月にイスラエルによるパレスチナ自治区ガザ地区への攻撃が始まると、ガザのイスラム組織ハマスに連帯を示し、参戦した。イスラエルへの攻撃に加え、25年10月の停戦までの間、紅海を航行する商船を100回以上も攻撃。海運の要衝であるエジプトのスエズ運河の通航量は激減し、世界経済に大きな影響を及ぼした。
今回はイラクの親イラン武装組織やレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラが次々と参戦する中、フーシ派は目立った攻撃を控えてきた。だが戦闘参加に踏み切った背景には、フーシ派が活動地域とする紅海周辺の戦略的な重要性の高まりがある。
イランによるホルムズ海峡の事実上の封鎖を解くため、米国はイランとの協議を模索する一方、中東に向かう兵力を増強させている。フーシ派はこの動きに対抗する形で、紅海とアデン湾をつなぐ海上の要衝、バベルマンデブ海峡の「封鎖」を見据えている可能性がある。
既にサウジアラビアは、紅海に面するヤンブーからバベルマンデブ海峡を通るルートに石油輸送を切り替えるなど、ホルムズ海峡の「代替路」利用を始めている。今後、フーシ派が紅海周辺で船舶の攻撃を繰り返し、バベルマンデブ海峡を封鎖すれば、こうした代替路も機能不全に陥る。
また、米軍がイランの原油取引の重要拠点であるペルシャ湾のカーグ島への侵攻を示唆する中、フーシ派の参戦はこうした米軍の動きをけん制する狙いもあるとみられる。
今後、米イスラエルがイエメン空爆に踏み切る可能性もあるが、フーシ派が拠点とする山岳地帯は武器庫の特定が難しいとされ、即座にフーシ派を弱体化できるかは不透明だ。フーシ派の武力展開が本格化した場合、中東の戦火はさらに拡大するリスクがある。【エルサレム松岡大地】
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