英、インド洋の要衝チャゴス諸島の返還凍結 トランプ氏翻意で
英国がインド洋の英領チャゴス諸島をモーリシャスに返還する手続きを凍結した。戦略的要衝の同諸島には米英軍の共同基地があり、トランプ米大統領が返還への支持を撤回したためだ。スターマー英政権は同意を得るべく米国との協議を続ける方針だが、米国の対イラン軍事作戦に非協力的だとしてトランプ氏が英国を繰り返し批判し、両国関係が冷え込む中、翻意させるのは容易ではないとの見方が強い。
スターマー政権は昨年5月、モーリシャス政府とチャゴス諸島の返還協定に調印。批准に必要な英議会での関連法案成立を目指していたが、今月13日に担当閣僚が議会で、法制化の手続きを事実上、停止したことを明らかにした。
インド南端の南方約1500キロに位置するチャゴス諸島は、19世紀にモーリシャスの一部として英国の植民地になった。モーリシャスは1968年に独立したが、チャゴス諸島については、インド洋に基地を確保したい米国の意向を受け、英国が65年にモーリシャスから購入して自国領に編入した。
米英軍の基地は諸島最大のディエゴガルシア島に70年代に整備され、英国はその過程で諸島の住民約1500人をモーリシャスなどに強制移住させた。
その後、モーリシャスが諸島の領有権を主張し、国際司法裁判所(ICJ)は2019年、英国による統治を「不法」と判断して返還を勧告。24年に発足したスターマー政権が返還に乗り出した。返還協定では、米英軍の基地については英国が99年間のリース契約で管理し、使用を継続することで合意していた。
トランプ氏は当初、返還協定への支持を表明したが、今年1月に自身のソーシャルメディアに「極めて重要な土地を手放すのはとんでもない愚行だ」と投稿するなど、反対に転じた。
2月初めには「合意は最善のものだと理解している」と述べ、態度を軟化させたかに見えたが、同月中旬以降は「大きな間違いだ」などと再び批判を強めている。
トランプ氏の「立場が変わった」(英担当閣僚)理由は判然としないが、米シンクタンクの外交問題評議会(CFR)は「トランプ氏が主張する(デンマーク自治領)グリーンランドの領有にスターマー首相が反対したことが主な要因の一つだ」という識者の見方を紹介している。
また、2月28日に米イスラエルがイラン攻撃を開始した際、米軍によるディエゴガルシア島の基地の使用をスターマー氏が拒否したことも、返還協定に反対するトランプ氏の姿勢を硬化させたと指摘する。
英メディアによると、66年の英米合意に基づき、チャゴス諸島の将来に関する決定には米国の同意が必要。そのためトランプ氏が支持に転じない限り、返還の実現は困難とみられる。
モーリシャスは反発している。ラムフル外相は今月11日、「脱植民地化を完了させるため、あらゆる外交的・法的手段を尽くす」と述べ、返還実現への圧力を強める考えを示した。【ロンドン福永方人】
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