<映画の推し事>韓国映画「君と僕の5分」 Jポップがつないだ…秘めた思い

2026/06/06 18:28 

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 韓国映画「君と僕の5分」は、性的マイノリティーの内面を繊細に描き続けるオム・ハヌル監督の話題の長編デビュー作品だ。昨年の第20回大阪アジアン映画祭に招待され、「ボーイ・ミーツ・ボーイ映画の傑作」と称された。

 作品の時代は、サッカーの日韓ワールドカップ共催やドラマ「冬のソナタ」を機に韓流ブームが起きる前の2001年。日韓関係の改善、性的少数者のカミングアウトなど、社会的タブーが一気に破られようとする転換期の期待と不安がJ-POPの歌に乗せて交錯する。

 舞台は、韓国で最も保守的な地方都市とされる南東部の大邱(テグ)市という設定だ。

 母親の離婚を機に首都圏から現地の高校に転校してきた主人公ギョンファンは、日本の音楽やアニメが好き。クラスメートから「オタク」とからかわれ、教室の隅で1人、イヤホンを耳にMP3プレーヤーから流れるglobeを聴き、心を閉ざす少年だった。

 そんなギョンファンに声をかけたのが、スポーツ万能の学級委員ジェミン。実は彼もglobeの音楽を人知れず聴いていた。

 互いに当時タブーだったJ-POP好きだと知ったことで交流が始まり、帰宅のバスでイヤホンを分け合い、重なり合う旋律のように距離を縮めていった。そして、お互い過去の秘密を打ち明け合うが、相手にひかれる秘めた気持ちは告白できず、関係が揺れる中で突如、ジェミンが拒絶と攻撃の行動に走り出す。

 この文脈を理解するには、01年の日韓関係と韓国内の性的少数者の置かれた状況を知っておく必要がある。

 1998年に金大中(キム・デジュン)大統領が日本の大衆文化を段階的に開放すると宣言し、国際映画賞受賞作品が上映。翌年には、席数に規制はあるものの、日本のアーティスト公演が公式に許されるようになった。しかし、01年には日韓間で歴史教科書問題が再燃し、後続の開放措置は先送りに。日本の歌謡曲のCD販売の全面解禁は04年まで待たされることになる。タブー突破とその反動が荒波のように行き来した時期だ。

 性的少数者の権利を巡っても、トランスジェンダーの歌手兼女優のハリスが01年に芸能界デビューし話題になった。一方、人気タレントのホン・ソクチョンは00年にゲイであると告白したが逆風にさらされ、次々と番組降板を余儀なくされた。変化は都市部から起きるが、保守的な地方都市の大邱では反発のほうが目立っただろう。

 自身も日本アニメのオタクを自称し、大邱で学生時代を過ごしたオム監督は、「一見すると開放的に見えながら、実は閉鎖的でもあった2001年。最も保守的な都市の象徴とされる大邱を舞台に、マイノリティー(性的少数者、あるいは日本カルチャーファン)として生きた人々の哀歓を描きたかった」と日本公開に先立ちメッセージを寄せた。

 青春期と今、都市と地方、日本と韓国。映画を通じて異なる次元を旅しながら、痛みを含めて、今ある自分の立ち位置を感じさせてくれる映画だ。【堀山明子】

毎日新聞

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