岐阜知事選 参院議員、突然の出馬撤回に自民のお家事情 9日告示
5期務めた現職知事が今期限りでの引退を表明した岐阜県。そのトップを選ぶ知事選が9日、告示される。一時は自民党の参院議員が出馬を表明し、4年前の前回選にも立候補した官僚出身候補との激戦が予想された。だが、その参院議員が突然の出馬撤回。背景には、裏金事件で退潮著しい自民党のお家事情があった。【太田圭介】
◇4年前は保守分裂
「(5期)20年というのは一つの節目」。古田肇知事(77)が今期限りでの引退を表明したのは2024年8月8日の定例記者会見だった。
古田氏は会見で、後継指名について「性に合わない」と否定。突如の引退表明に県幹部も、県議会多数派の自民県議も「全く聞いてなかった」と驚きを隠さなかった。
自民県議には4年前の知事選での苦い記憶があった。21年の選挙では、5選を目指す古田氏と、元内閣府大臣官房審議官で新人の江崎禎英氏(60)が一騎打ちを展開。県内選出国会議員の大半を含む古田氏支持派と、ベテラン県議が中心の江崎氏支持派とに保守が分裂、選挙後も自民県連内に遺恨を残した。
◇首長の大半が参院議員に出馬要請
古田氏の引退表明直後に動いたのが自民党の渡辺猛之参院議員(56)=岐阜選挙区=だった。「首長の職務に魅力を感じている」。渡辺氏は24年8月10日、地元の岐阜県美濃加茂市内の事務所で報道陣にこう語り、知事選出馬へ意欲を見せた。
県内全21市長と、坂祝(さかほぎ)町と養老町を除く19町村長は同22日、連名で渡辺氏に知事選出馬を要請。「援護射撃」を受けた渡辺氏は同10月2日、立候補を表明した。
一方、かねて知事選への再挑戦に意欲を見せていた江崎氏は24年8月21日、岐阜市内で会見し「若者や女性が働き、人と物が集まる県にする」と立候補を表明した。
◇自民大敗の衆院選が転機
渡辺氏と江崎氏は共に県政第1党の自民に推薦願を提出。自民県連内では「これでは(保守分裂選挙となった)4年前と同じ展開だ」と危機感を募らせ、推薦願の扱いを巡って協議を重ねた。選考の透明性を重視する国会議員が「党員投票で決定すべし」と主張する場面もあったが最終的に「告示日まで時間がない」などを理由に、県連で審査して推薦候補を一本化することでまとまった。
こうした状況の中で実施された24年10月の衆院選。岐阜県は「保守王国」と呼ばれ、前回21年衆院選でも自民公認候補が5小選挙区を独占してきた。
だが、今回は事情が違った。自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件で党の信頼は失墜。地元岐阜選挙区の自民党参院議員、大野泰正氏が政治資金規正法違反(虚偽記載)の罪で在宅起訴されて党を離党するなど、逆風の中での選挙となった。
「裏金議員」を含む多くの前職が落選し、与党が過半数割れに追い込まれる中、岐阜4区では自民公認の前職、金子俊平氏が立憲民主党候補に敗れ、比例復活も果たせなかった。
自民劣勢は衆院選の公示直後から明白だった。県連内では「渡辺氏も知事選で苦戦するのでは」との懸念がくすぶっていた。県連は24年10月、複数回にわたり知事選に関する世論調査を実施したが、「江崎氏が渡辺氏を大きくリードしていた」(県連関係者)。
窮地に立つ渡辺氏にとどめを刺したのが、衆院選で落選した金子氏が選挙期間中に女性運動員にセクハラ行為をしたとの報道だった。これに支援者は反発。金子氏の後援会は解散し、知事選で渡辺氏を支えるはずだった組織は弱体化を余儀なくされた。
◇国会議員、首長が不出馬の説得
政界関係者によると、衆院選投開票日以降、渡辺氏に対し、国会議員や首長らが「参院議員を続けた方がいい」と説得した。外堀を埋められた渡辺氏はこの時点で出馬を見送る考えを近しい関係者に伝えたという。
渡辺氏に不出馬を要請した自民の松山政司参院幹事長は報道陣に「渡辺氏の辞職で25年に補選となれば県民に苦労をかける」と強調。自民に逆風が吹く中、渡辺氏が知事選に出馬した場合に実施される参院補選を回避したい意向をにじませた。
そして渡辺氏は24年11月9日、知事選への出馬見送りを正式表明し推薦願を取り下げた。渡辺氏は報道陣に「参院での与党の貴重な議席を手放してはならないと判断した」と終始硬い表情で話した。
他方、江崎氏は衆院選中、複数の候補者事務所に顔を出すなど、地道な政治活動を重ね支持固めを図ってきた。渡辺氏の不出馬を受け、自民、立憲、国民民主、公明の各党は江崎氏推薦へとかじを切った。
◇
現職が引退し、20年ぶりの新人対決となる知事選を巡っては、江崎氏に加え、産業カウンセラーで新人の和田玲子氏(64)=共産推薦=が立候補を表明。また他の新人男性も出馬の動きを見せている。
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