「政治とカネ」問題続く自民、候補擁立に苦戦 東京都議選まで3カ月
裏金事件に石破茂首相による商品券配布――。「政治とカネ」の問題が続く自民党が、東京都議選(定数127)の候補者擁立に苦戦している。6月22日の投開票まで3カ月となるが、全42選挙区のうち、公認候補未発表が16。夏の参院選の前哨戦となる首都決戦で、第1党を維持できるかが焦点になりそうだ。
◇1次公認発表、1年前が通例だったが…
「全選挙区に最低1人は擁立したい」。政治資金パーティー裏金事件で都議会会派が東京地検特捜部の捜査を受けていた2024年12月、井上信治都連会長は都議選の擁立規模について、そう述べた。候補者不在の選挙区で一括公募する考えも示した。
しかし、年明けからホームページなどを通じて多摩地域の4選挙区(立川市、青梅市、昭島市、小金井市)で候補を募ったところ、2月14日の締め切りまでに申し込みは一件もなかった。都連幹部は「ネット広告を出しただけだったので『それは集まらないよね』と話していたところ。引き続きいろいろな方法で募っていきたい」と平静を装った。
ただ裏金事件が国会議員の派閥に続き、都議会会派にも広がった影響で、擁立作業は大きく遅れている。
自民の1次公認は1年ほど前に発表されることが多く、前回21年7月の都議選では20年8月に40人の公認を発表した。今回は今年に入って会派の会計担当職員が特捜部に略式起訴されたのを受け、記者会見を開き、政治資金収支報告書への収入不記載に関与した都議らが26人に上ったことや、会派の幹事長経験者6人を都議選で非公認とする方針を明らかにした。ようやく1次公認(26人)の発表にこぎ着けられたのは1月31日。3月12日発表の2次公認も4人にとどまった。
◇公明支持者から「自民と距離を」
国政で連立を組む公明党との連携も期待できない。公明は前回、公認候補を出さない選挙区で自民候補を支援したが、今回は都本部で同種の推薦を見送る方針を確認している。背景には昨年10月の衆院選の苦い記憶がある。自民が派閥裏金事件を受けて非公認とした候補に推薦を出すなどしたが、あおりを受けて惨敗。公明関係者は「支持者の間では『自民と距離を置け』という声が根強い」としており、公認する22人の当選に向けて集中する考えだ。
さらにここにきて、石破首相が自民衆院1期生との会食に際し、1人10万円分の商品券を配布した問題が明らかになった。岸田文雄前首相も同様に商品券を配布した疑いが浮上。ある自民都議は「派閥裏金問題で落ちた支持率がようやく戻ってきたところだったのに急落だ」と嘆く。さらに「商品券問題、都議会の裏金問題、公明党の推薦なしの三重苦。票が減る要素しかない」と肩を落とした。
都議選には、小池百合子都知事が特別顧問を務める「都民ファーストの会」31人▽共産党23人▽立憲民主党19人▽日本維新の会5人▽国民民主党6人▽れいわ新選組3人▽参政党4人――の公認が発表されているほか、石丸伸二・前広島県安芸高田市長が代表を務める「再生の道」が候補の選定を進めている。【山下俊輔、島袋太輔】
◇都議選は国政選挙の「先行指標」
東京都内は無党派層が多く、都議選は直後に控える国政選挙の「先行指標」と言われている。
都議会で長く「1強時代」を送ってきた自民党だが、1989年の都議選は消費税導入やリクルート事件の影響を受け20議席減と大敗し、社会党(当時)が躍進。直後の参院選でも自民は大敗し、過半数割れに追い込まれた。2009年は民主党(当時)が54議席を獲得して第1党になり、翌月の衆院選で政権が交代した。
17年は小池百合子都知事が率いる地域政党「都民ファーストの会」が55議席で第1党に躍進、自民は告示前の57議席を過去最低の23議席に減らした。ただ、秋の衆院選では小池氏が結党した「希望の党」は失速し、自公で3分の2を占めた。
21年は自民が過去2番目に少ない33議席だったものの第1党に返り咲き、秋の衆院選でも快勝した。【山下俊輔】
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