想定外の人気、再登場求める声絶えず 活躍続くモリゾー・キッコロ

2025/03/22 18:00 

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 2005年に開催された愛知万博から今年で20年。25日から半年間続く20周年イベントのPRに、万博の公式キャラクターだった「モリゾー」と「キッコロ」が引っ張りだこだ。「モリゾー・キッコロって、万博後に森に帰ったんじゃなかったっけ?」。当時大学生だった私にはそんなおぼろげな記憶が残る。なぜ今も活躍が続いているのか。【加藤沙波】

 2月下旬、中部空港(愛知県常滑市)で行われたイベントに登場したのは、緑と黄緑のもふもふした2体の着ぐるみ。モリゾーとキッコロだ。若い女性や家族連れなどが一緒に写真を撮ろうと列を作り、グッズを手に声援を送る姿もあった。

 家族で訪れた県内の女性(48)は、婚約中だった夫と万博を訪れた際に買ったモリゾーのぬいぐるみなどを持参。長男(10)の小さい頃のおもちゃにもなっていたといい、「丸くてふっくらして、とにかくかわいいし癒やされる。ずっと大好きなキャラクターです」と笑顔を見せた。

 ◇対照的な“森の精”

 モリゾーとキッコロは、当時大阪を中心に活動する若手アーティストだった、さいとうきぬよさん・よむらようこさんの姉妹ユニット「アランジ アロンゾ」が生み出した。万博会場がある「海上(かいしょ)の森」に住む“森の精”で、森のことは何でも知っている「森のおじいちゃん」(モリゾー)と、好奇心と行動力あふれる「森のこども」(キッコロ)という設定。万博開幕3年前の02年3月25日、公式キャラクターとして初めてその姿を現した。

 よむらさんによると、「コノハズク」や「植物の種」など他にも4パターンのデザインを万博のコンセプトに沿って描いていたが、最初に思い浮かんだのが「おじいちゃん」だった。元気いっぱいでみずみずしい「こども」の姿は、おじいちゃんとのバランスを考えて誕生したという。

 その3カ月後には、8万2500件を超える一般公募の中から両キャラクターの愛称がモリゾー・キッコロに決まったと発表。以来、着ぐるみやポスターなどに登場し、万博のPRに大きく貢献していくことになる。

 当初、「モリゾーの目が怖い」との意見が寄せられていたというが、「この目の雰囲気がいいと思うんです」と、よむらさんは言う。「自然との共生」を掲げる愛知万博だからこそ、森に対する「畏怖(いふ)の念」やその奥深さを表現する必要があると感じていたからだ。「ただ『かわいくて優しい』だけじゃない、そんなキャラクターであってほしかった」

 当時の毎日新聞でも、そうした「怖い」との声に対し、「一見不気味ですが、よく見るとかわいい面も」と話す万博協会担当者のコメントを掲載。記事の見出しには「きもかわいい」の文字が躍る。

 ◇開幕前に全国区に

 「いかに知名度を上げるか試行錯誤する中で、キャラクターにストーリー性を持たせやすかったことが非常に良かった」。こう話すのは、当時の万博協会事務総長だった中村利雄さん(78)。04年4月からテレビアニメ化し全国放送もされたほか、同年9月には当時の皇太子さま(現天皇陛下)が、幼い愛子さまにモリゾー・キッコロが主役の絵本の一節を読む様子を映したビデオを宮内庁が公開。ワイドショーが繰り返し取り上げたことで大きな注目を集めた。

 開幕後は、会場内で着ぐるみが登場する際には「子どもたちが殺到すると危険だから」と、比較的すいている場所を選んで出没するほどの人気ぶりだった。公式記念品ショップはぬいぐるみなどのグッズを買い求める人たちでにぎわい、売り切れる商品も。公式記録によると、公式グッズは約900種類製作され、売り上げは総額92億円に上った。

 ◇森に帰ったはずが…

 閉幕日には、モリゾー・キッコロが森に帰るというセレモニーが行われ、別れのメッセージを告げて森に姿を消す演出に涙を流して見送った人も多かったようだ。中村さんは「万博のシンボルとして大成功だった。ここまでの人気は想像していなかったし、まさか万博が終わっても続くとは……」と振り返る。

 閉幕直後に百貨店で始まった万博商品セールには、モリゾー・キッコロのグッズを求めて開店前から長蛇の列が。当時の毎日新聞によると、万博協会は閉幕後、着ぐるみを所有する自治体や企業などに「使用の原則禁止」を伝えていたが、再登場を求める声が絶えず、閉幕数カ月後には、万博の理念を継承・発展する舞台に限って使用を認めている。

 一度は森に帰ったモリゾー・キッコロだったが、「皆さんを懐かしみ、(環境問題の高まりなどによる)新たな役割に張り切っている」との設定で戻ってくると、子ども向けテレビ番組への出演や、08年のスペイン・サラゴサ万博の公式マスコットとのアニメ共演など活動を続けている。

 ◇20周年もPR

 愛知県が25日から開催する20周年イベントにあたっても、県内54市町村とコラボした新たなデザインが制作されたり、ラッピング列車や切手にも登場したりと、今なおPRの“顔”だ。開幕後は新たなグッズの販売や、ミュージカルへの出演も控える。

 20年を経ても活躍を続けるモリゾー・キッコロ。“生みの親”よむらさんは「長く忘れられずにいることはすごくうれしいし、キャラクターとともに『自然との共生』がずっと続いていくことを願っています」と話している。

毎日新聞

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