江藤農相辞任、参院選に打撃 楽観から一転、野党要求にあらがえず

2025/05/21 10:16 

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 「コメは買ったことがない」などと発言した江藤拓農相が辞任に追い込まれた。昨秋の衆院選で「少数与党」となり、一致結束した野党の要求にあらがえなかった形だ。夏に参院選を控える石破政権にとって大きな打撃となる。

 失言が表面化した19日の段階で、政権は楽観していた。立憲民主党と日本維新の会の幹部が農相不信任決議案提出の可能性に言及したものの、国民民主党の玉木雄一郎代表は「やるべき仕事で結果を出してもらいたい」と否定的な考えを示していたからだ。衆院では野党が多数を占めるが、足並みがそろわなければ不信任案は可決されない。

 ところが、20日になると、立憲の野田佳彦代表が「国民感情を逆なでする発言で、その任にあらずだ」と批判のトーンを強め、国民民主からも「庶民感覚、生産者の思いが分からない農相は即刻辞めるべきだ」(榛葉賀津也幹事長)との声が上がるようになった。

 20日午後には立憲、国民民主など野党5党の国対委員長が会談し、江藤氏や首相が退任を判断しない場合、農相不信任案の提出も検討することを確認し、足並みをそろえた。これにより、不信任案が提出されれば可決される可能性が高まった。

 江藤氏に対しては「更迭すれば、コメ政策に空白が生じてしまう」(自民党幹部)として職務を全うすべきだとの意見の一方で、自発的な辞任を促す声が与党内から上がっていた。自民の閣僚経験者は「あの発言で続投するのは無理だ。耐えられない」との見方を示し、与党幹部は「首相は早く手を打って江藤氏をクビにしたほうがいい」と話した。

 コメ価格の安定に向けて、政府備蓄米の放出など対策が続く中での農相の辞任は与党にとっては痛手だ。

 17、18両日の毎日新聞の世論調査で、石破内閣の支持率は22%と過去最低を更新。コメ高騰への効果的な対策が打てないことに加え、社会保障の財源確保を理由に消費減税に慎重な姿勢を示す首相に対する不満が表れた形で、反転攻勢の兆しは見えない。参院選での目玉政策も見えず「過半数維持は絶望的だ」(自民参院議員)との声も漏れる。

 一方、野党は農相不信任案の提出検討では足並みをそろえたが、6月の国会会期末に向けて内閣不信任案提出の是非が焦点となる。今後、与野党の攻防が更に激しくなりそうだ。【池田直、内田帆ノ佳】

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