激戦の面影消えた住宅地 掘り出された遺骨の父 息子、初めて戦没地へ
初めて訪れた父の戦没地は整然とした街並みの住宅地へと変わり、かつての激戦地の面影はなかった。18日、那覇市真嘉比(まかび)。神奈川県逗子市の映画プロデューサー、田寺順史郎さん(81)は第二次世界大戦末期の沖縄戦で亡くなった父光紹(こうしょう)さんの遺骨発見現場に手を合わせ、母の遺影を添えた。遺骨が返ってこなければ、おそらくここに来ることも、父が亡くなった日付に思いを巡らせることもなかった。「来ることができて、ありがたい」
◇映画「骨を掘る男」転機に
案内役を務めたのは、沖縄各地の自然壕(ごう)(ガマ)などで戦没者遺骨の収集を40年以上続ける市民団体「ガマフヤー(ガマを掘る人)」代表の具志堅隆松さん(70)。2009年に土地区画整理事業が進む真嘉比地区で光紹さんの遺骨を掘り起こした。両手を組んだ状態で埋葬され、「陸軍少尉田寺光紹」と刻まれた認識票を身に付けていた。
田寺さんの兄・尚和さん(87)が口内の粘膜を検体として提出し、DNA鑑定で13年に身元が特定された。遺族はその年の暮れ、光紹さんの葬儀を営んだ。ただ、その時は父の最期や遺骨発見の経緯に深い関心を持ってはいなかった。
転機は約11年後の24年夏。具志堅さんの活動を追ったドキュメンタリー映画「骨を掘る男」を偶然見た田寺さんは言葉を失った。父の遺骨が発見されるまでに地道な取り組みがあったことを初めて知ったからだ。
100ヘクタールに及ぶ真嘉比の開発現場で具志堅さんは一人で遺骨収集に着手。発見が相次ぐと、行政やマスコミに掛け合い、ボランティアや路上生活者ら数十人を募って規模を拡大し、多くの遺骨や遺留品を重機による損壊や散逸から守った。
思いが込み上げ、連絡先を探ってお礼を伝えると、具志堅さんは言った。「沖縄で会いましょう」。田寺さんは沖縄の苦難の歴史を学び始めた。
◇白兵戦 日米双方に多数被害
真嘉比は激戦地だった。沖縄戦を戦う日本軍第32軍が司令部を置いた首里城地下壕は東にわずか2キロ。丘の形から米軍が「シュガーローフ」や「ハーフムーン」と呼んだ一帯では白兵戦が展開され、シュガーローフでは米軍だけで1週間に2662人の死傷者を出した。日本軍の被害はそれを大きく上回るとみられる。
大卒の東京都職員だった光紹さんは当時38歳。2回目の召集で沖縄戦に駆り出され、中隊長を務めた。遺骨返還時の資料によると、戦没日は「5月20日」だった。その2日後、第32軍は司令部を放棄し、持久戦を展開するために沖縄本島南部へ撤退することを決めた。
その後、逃げ惑う住民と軍隊が混在した本島南部では住民の死者が急増した。敗残兵がガマに避難した住民を追い出したり、スパイ(裏切り者)として虐殺したりしたとの証言も残る。田寺さんは南部撤退の直前に亡くなった父を複雑な思いで振り返る。「生きていたら、将校の父が住民を苦しめる側にいた恐れもあったのかもしれない」
この日は光紹さんが沖縄から兄に送った手紙の写しを持参した。「お母さんに心配させないようにりっぱにやりなさい」などと書かれ、「今日はこれで終わります」と締めくくられていた。「父は生きて帰るつもりだったのかも」と田寺さん。「遺骨が返ってこなければ、父が死んだ時の様子が分かることもなかった。一人でも多くの遺骨が引き取られてほしい」【比嘉洋】
◇戦没者遺骨のDNA鑑定
厚生労働省はDNA鑑定が技術的に可能となった1999年以降に収集した遺骨と、戦没者遺族が検体として提出した口内粘膜のDNAを鑑定し、身元が特定できた場合、遺骨を返還する事業を実施している。これまで沖縄戦の戦没者は、手がかりとなる認識票などの遺留品が見つかった遺骨6柱の身元が特定された。一方、手がかり情報がない遺骨は2024年11月までに1656件の鑑定申請があったが、身元特定に至っていない。アジア太平洋各地で収集され、鑑定の申請があった約5000柱の遺骨のうち、これまで手がかり情報なしで身元特定に至ったのはタラワ(キリバス)の2柱、硫黄島の3柱。
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