共通テストに「意地悪ばあさん」登場 女性参政権巡る論争の題材に
大学入学共通テストの「歴史総合、日本史探究」で、漫画家の長谷川町子が週刊誌「サンデー毎日」に連載した「意地悪ばあさん」の4コマ漫画が登場した。戦後、女性参政権が実現した後も女性の政治参加が進んでいたかどうか、社会的な論争を踏まえて考えさせる問題の題材として取り上げられた。
長谷川町子美術館のホームページによると、「意地悪ばあさん」は「サザエさん」連載の傍ら、1966年1月~71年7月にサンデー毎日に連載された。単行本などでは「いじわるばあさん」の表記で、67~69年と81~82年にはタレントで元東京都知事の青島幸男らの主演でテレビドラマ化もされている。
出題された漫画は71年3月21日号の掲載で、松本清張の年譜を通して日本近現代史について扱う第6問の問5で登場。注釈には当時、社会派小説家の石川達三が「女性に選挙権を持たせるべきではない」と発信して論争を呼んでいたことが示されている。
漫画の内容は、この発信を松本のものだと勘違いした意地悪ばあさんが、松本の自宅前で大音量でラジオを流して執筆を妨害。「女にセンキョ権があってわるい???」と怒るが、松本に勘違いを指摘されて逃げ帰る――というオチだった。
設問では、漫画が描かれた当時に女性の政治参加はどの程度進んでいたのか、漫画の作者が松本を登場させたのはなぜかという疑問に対する調べ方として適当な選択肢の組み合わせを選ぶ。正答は「この時期までの国政選挙における投票率を男女別に調べる」と「主要な週刊誌における松本清張の社会的評価について調べる」だった。
サンデー毎日では実際に71年2月28日号で、石川の「婦人参政権亡国論」が載っている。女性は自主性が弱い存在だとして「タレント候補でも出てくればあの人、姿がいいわ、声がいい、ゼスチュアがいいわというように(中略)みんなが一つの方向に流れてしまう」などの理由で、女性は選挙権を持つ必要がないと断じている。
さらに「女房が寝坊をして亭主の朝飯を作らない、インスタント食品で家族の食事を賄う、赤ん坊の産着を縫わずにデパートで買う」ことへの非難や、「男と女が同じことをするのは、自由でも平等でも解放でもない」などの文言が並ぶ。
これに対し、作家の瀬戸内晴美(寂聴)は翌週の3月7日号で「亭主関白亡国論」を掲げ、女性を家庭内の役割のみに押し込めようとする論調に真っ向から反論。その後も他の論客が誌面上で主張を繰り広げており、読者の反響があったことがうかがえる。
このほか、「公共、倫理」と「公共、政治・経済」では世界経済フォーラムが2023年に発表したジェンダーギャップ指数の日本の順位が146カ国中125位だったことを伝える新聞記事の要約が題材となった。性別役割意識に関する内閣府の意識調査や、日本を含む4カ国の女性議員比率なども登場し、データを適切に読み解けるかが問われた。【西本紗保美】
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