教育長空席問題で説明会 市長「異なる経歴の人材を」 高知・香美

2025/01/20 15:19 

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 高知県香美市の教育長人事を巡って市長と教育委員側が対立し、2024年5月以降、8カ月近くにわたって教育長が空席となっている問題で、依光晃一郎市長は19日、同市で市民向けの公開説明会を開いた。

 香美市の教育長人事では、21年から務めてきた前教育長が24年5月に任期切れを迎えるのに当たり、再任を求める教育委員(4人)と、新たな候補者を推す市長とが対立。同月の市議会で市長が提案した人事議案が否決され、以降、教育長が不在という異例の事態が続いている。教育委員の1人が教育長代理を務めている。

 大きな対立点は教育ビジョンの違いだ。市長は保育園・幼稚園から社会人までの生涯学習を進めるマネジメント能力のある人材が望ましいとする一方、教育委員側は市の責任として、中学校までの義務教育を充実させる人材が適切だとしている。また、市長が前教育長にパワハラに当たる発言をしたと主張する教育委員側と、教育委員が事前に教育長人事の情報を市議会に漏らしたと主張する市長の対立も、事態の混迷につながっている。

 19日の説明会は2回開催し、午前の会には約100人が参加した。依光市長は、これまで9回、教育委員と話し合ってきたが、意見は平行線をたどって「何も進まなかった」と説明。一方、教育委員と対立したまま一方的に新教育長を選任・就任させても、教育行政に混乱が生じるとして、現段階では人事議案の提出には消極的な姿勢を見せた。

 依光市長は「教育委員会改革を進めたい。そのためには広い視野を持つ、(従来の教育長とは)経歴の異なる人材が必要だ」と述べ、これまで通りの主張を改めて示した。

 参加者からは「学校も保護者も教育長がいなくて本当に困っている。市長は行動してほしい」「市長は異なる意見をまとめるリーダーの資質に欠ける」など、市長への批判的な声が出された。一方で、「市長が人事権を持っているのだから、法律にのっとって行使すべきだ」など、市長の考えを支持する意見もあった。

 終了後、依光市長は取材に対して「厳しい意見が寄せられた。教育長が決められなければ、(26年4月の任期満了後の)私の2期目は厳しいと考えている。だが、折れる気はない」と述べた。教育委員側に歩み寄る考えがないことを示した格好で、事態収拾のめどはつかないままとなっている。【小林理】

毎日新聞

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