少年犯罪被害者の集会が終了 公的支援なく自助グループは資金難
少年犯罪被害当事者の会が毎年開いてきた追悼集会「WiLL」が今月、幕を下ろした。わが子の命を少年に奪われた遺族が1999年から続けてきたが、公的な経済支援はなく民間の助成金が途絶えたため、継続を断念した。こうした犯罪被害者の自助グループの多くは近年、資金難や当事者の高齢化などにより、活動の継続が難しくなっている。
WiLLは年に1回、大阪市で開催。同時にシンポジウムも催されてきた。今年3月9日の最後の集会には30家族以上が全国から集まった。
少年にバットで殴られ、高校1年の次男、光貴さんを亡くした大久保ユカさんが心境を明かし、涙をこぼした。「息子を殺され、地獄の日々を過ごしていた。『なぜ守ってあげられなかったのか』。無念と恐怖と自責の念にとらわれて私の心は凍りついていました」
会の代表、武るり子さんは96年、少年グループによる集団暴行で16歳の長男の孝和さんを失った。「胸にぽっかり空いたというけれど、息子を亡くしたら違った。胸はえぐられるんです」と振り返る。
少年事件で子供の命を失った遺族にとって、集会は「悼み」を共有し、参加者にその「痛み」を伝える場でもあった。被害者支援を巡っては被害の内容に応じた公的な支援組織はほぼなく、その支援の肩代わりを当事者の自助グループが担ってきた。
「普通の生活を送るため、普段はできるだけ娘を忘れて生きてきた。でも、WiLLの日だけは抑え込んでいた感情が全部戻ってきた。それが『救い』だった」。2004年に12歳の長女、怜美さんを殺害された御手洗恭二さんは振り返る。「集会の存在が生きる手段だった」と大久保さんも言葉を重ねた。
組織が解散するわけではないが、最大の活動だった追悼集会は、資金難を理由に今年で終わった。犯罪被害者の支援を巡り、04年に犯罪被害者等基本法が成立し、全国に支援センターも整備された。しかし被害者を取材すると少年犯罪、交通事故、性犯罪と被害はさまざまだと感じる。集会が終わった今、こんな思いがよぎる。世の中の被害者支援の体制は整ったが、それでも社会の陰で隠れて苦しむ遺族は減っていない、と。
ただ当事者の自助グループは高齢化し、新たな遺族をケアし、手弁当でグループを存続させるのが難しくなっている。新たな被害者を孤立させないためにも、経済的な面も含めて公的支援があっていいのではないか。【川名壮志】
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