平均寿命、85.2歳に 30年間で5.8年延長も健康寿命との差拡大
日本の平均寿命は2021年時点で85・2歳となり、約30年間で5・8年延びた一方で、「何らかの健康問題を抱えて生活する期間」が延びて健康寿命との差は広がったとの解析結果を慶応大などのチームがまとめた。英医学誌ランセット姉妹誌で発表した。チームは「健康長寿社会に向け、新たな社会的アプローチの展開が重要だ」と指摘している。
研究チームは、国の人口動態統計や国民健康・栄養調査、有病率といった先行研究などのデータを使い、独自に都道府県別の平均寿命などを算出した。健康寿命は、国の指標と異なり、有病率とその影響の程度を反映させた。
結果によると、平均寿命は1990年の79・4歳(小数第2位を四捨五入、以下同)から、21年には85・2歳に延びた。
また健康寿命は、90年の69・4歳から、21年は73・8歳に延びた。ただ、健康問題を抱える期間は約30年間で1・4年分拡大し、11・3年になった。
都道府県別の平均寿命では、90年には沖縄が80・6歳で最も長く、大阪の78・2歳が最短で、2・3年の差だった。21年には全ての都道府県で延びたが、最長の滋賀(86・3歳)と最短の青森(83・4歳)との差は2・9年に拡大した。
脳卒中や虚血性心疾患、胃がんなど主要な病気による高齢化の影響を除いた死亡率の推移を見ると、90~05年には平均2%減らしたが、15~21年は同1・1%減にとどまった。チームは「医療の進歩は大きな成果をあげているが、社会的なケアの充実など、医療と連携した多面的アプローチも必要だ」と分析した。
都道府県別の平均寿命の伸び率の格差を巡り、チームの野村周平慶応大特任教授(国際保健学)は「医療資源の適切な配分や生活習慣の改善など、寿命が延びたところを参考にすることで、格差縮小が期待できる」と指摘した。
成果はランセット・パブリック・ヘルスに掲載された。【渡辺諒】
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