物価高騰の波、被災者にも 生活再建に不安 大船渡火災1カ月
平成以降の林野火災で国内最大の焼失面積となった岩手県大船渡市の大規模山林火災は、26日で発生から1カ月を迎えた。9日に延焼の危険性がない鎮圧状態となったが、被災した人たちの自宅やなりわいの再建はこれからだ。公的支援や保険では必要な費用の全額は賄えず、物価高騰の影響も受け、被災者は不安を募らせている。
◇ローン残る住宅が全焼
「火事の前と同じような家を再建したいが、小さくせざるを得ないかも」。妻や未成年の子供らと7人で暮らしていた自宅が全焼した男性はそう言って視線を落とした。
男性は14年前の東日本大震災で住んでいたアパートが全壊し、避難所や仮設住宅を経て7年前に地元に家を建てた。2世帯での生活も想定し、トイレや風呂を複数設置するなどしたため6500万円かかった。2000万円は現金で支払い、残りは35年ローンを組んだ。
男性の住む地域にはマンションが無く、広い敷地の戸建てに2世代が一緒に住むのは珍しくない。焼失前の自宅は隣近所の人が立ち寄る憩いの場となっていた。
男性が自宅の再建に向けて業者に尋ねたところ、「前の家と同じ建て方だと8000万円かかる」と告げられた。資材や人件費が高騰しているためだ。現在の借り入れ分は火災保険で賄えそうだが、再建には元の家の1・2倍の費用がかかる。さらに、家具なども買い直さなくてはいけない。
今回の山林火災は災害救助法の適用を受けており、家屋の再建には被災者生活支援金を活用できる。だが、支給限度額は300万円で、約20年前から変わっていない。支援金以外の公的制度もあるが多くは貸し付けで、返済しなければならない。男性は「現在の制度をすぐに変えられないのは理解しているので、制度以外の部分で配慮してもらえればありがたい」と訴える。
大船渡市ではこれまでに住宅102棟の焼損が判明し、そのうち空き家を除く80棟に人が住んでいた。焼け出された避難者は200人近くおり、男性のような負担を抱える市民について渕上清市長は「住まいの再建に全力を挙げる」と強調する。ただ、市に寄せられた義援金と見舞金計3億8300万円余り(19日現在)の配分は検討委員会を設置して決める予定。市幹部は「既存の制度以外の支援策は政策判断が必要で、4月以降に検討する」と説明しており、時間がかかりそうだ。
◇6億円分の定置網など灰に
また、今回の火災では漁業施設や漁具の焼失など主力の水産業にも深刻な被害が出ている。
市北部の三陸町にある綾里(りょうり)漁協では定置網の保管庫と網4セットが焼け落ちた。保管庫は東日本大震災の津波で全壊し、10年前に2億3500万円で再建した。複数枚を組み合わせて魚群を捕獲する網は1セット約1億円で購入しており、合わせて6億円余りが灰になった。
漁協によると、定置網は綾里半島の南側2カ所に設置していたが、1カ所につき2セット必要だという。一つを漁に使い、もう一つを補修するサイクルで回しているためだ。
和田豊太郎組合長(74)は「倉庫には火災保険が出るが、建築資材の高騰などで10年前と同じ金額では建てられない」と話す。定置網の漁業共済は海中に設置している時の損害が対象で、倉庫に保管していた場合は対象外。このため新たな支援がなければ、自前で調達しなくてはならない。
定置網漁は5月の連休明けから12月までで、綾里漁協は他の漁協から使っていない網を借りるなどして早期の漁の再開を目指す方針だ。21日には岩手県庁を県漁連ら8団体と訪れ、知事に定置網を含む漁具の復旧への支援などを要望した。漁協は高齢化や後継者不足などで組合員の減少が続いていた。和田さんは「このままだと更に浜を離れる人が出るのではないか」と顔を曇らせる。
火災は2月26日に発生し、約2900ヘクタールが焼失。3月9日に延焼の危険性がない鎮圧状態になったが、消防などによる23日の現地調査で残り火と白煙が2カ所で見つかり、鎮火の判断には至っていない。【奥田伸一】
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