定員割れ加速の私立大、「淘汰政策」に悲痛 「事実上の倒産必至」

2025/03/27 07:30 

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 大学など高等教育機関の修学支援制度や私学助成金の交付などに定員充足率の要件があることについて、私立大から不満の声が上がっている。私立大の定員割れは地方を中心に6割近くに上っており、日本私立大学教職員組合連合(私大教連)は私立大に定員減と撤退を迫る「淘汰(とうた)政策」をしているとして、文部科学省に要件の撤廃を求めている。

 私大教連は1月、全国で私大などを設置する学校法人の理事長・学長に対し、修学支援制度のほか、私学助成金の交付、新学部設置・改編の際、定員充足率が一定の基準を下回ると対象外や不交付となることについて尋ねた。理事長・学長から計197件の回答が寄せられた。

 授業料・入学金の減免や給付型奨学金の支給といった修学支援制度についての近い考え方は「学生に対する支援であるから、機関要件は廃止すべきだ」が59・9%で最も多かった。2020年度に始まった修学支援制度は24年度に定員充足率が厳格化され、3年度連続で8割未満の場合は対象から原則外されることになった。ただ、これにより対象機関の取り消しが急増したため、25年度は緩和することにしている。

 定員充足率が9割を切ると減額が始まり、5割以下になると不交付となる私学助成金については「定員よりも減少している学生数と在籍する教職員数に基づいた減額にとどめるべきだ」との回答が83・8%に上った。

 定員充足率が5割以下の学部が一つでもあれば学部の設置認可申請ができない制度についても「定員割れ解消のための自主的な改善努力を妨げる措置であり、廃止すべきだ」が86・7%に達した。

 自由記述欄には「急激な少子化により八方ふさがり」「事実上の大学廃止(倒産)が必至」など悲痛な声が寄せられた。千葉県内の看護大の理事長は、国公立の看護学部が周辺になく、卒業生の多くが地域医療に従事しているとし「都市部でいくら看護師を養成しても地方、過疎地域の病院には就職しない。ただ定員充足率のみで地方の私大助成をうんぬんすることは全く理解できないし、医療崩壊に直結する」と記した。

 中国・四国地域の学長は「修学支援制度が利用できない場合、大学の存続は望めない。募集停止する大学が増えれば、地方で進学できる大学(分野)の選択肢が減少し、若者の県外進学(就職)が加速され、地方の人口減少が一層進む」と指摘した。

 日本私立学校振興・共済事業団(私学事業団)によると、24年度に定員充足率が100%未満の定員割れとなったのは私立大で59・2%、短期大では91・5%に上る。私大教連は文科省に私大振興を進めることを求めており、角岡賢一・中央執行委員長は記者会見で「私立学校法人を国として支える姿勢を示してほしい」と述べた。【井川加菜美】

毎日新聞

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