「今年は弟のそばに父が」 犠牲の大学生を兄らが追悼 熊本地震9年

2025/04/16 09:48 

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 2016年4月の熊本地震で、2度目の最大震度7を観測した「本震」から16日で9年となった。熊本県南阿蘇村では、本震で土砂崩れに巻き込まれた同県阿蘇市の大学生、大和晃(ひかる)さん(当時22歳)の母忍さん(57)と、兄翔吾さん(32)らが発生時刻の午前1時25分に現場近くの祭壇で手を合わせた。

 この日、毎年忍さんらと慰霊に訪れていた晃さんの父卓也さんの姿はなかった。卓也さんは24年9月、病気のため66歳で他界した。

 卓也さんと忍さんは本震後、崩落した旧阿蘇大橋の近くを車で走っていて行方不明になった晃さんを、県警などが捜索を打ち切った後もあきらめず独自に捜し続けた。橋の下流で晃さんが乗っていた車を発見し、約4カ月後に遺体を自宅に迎え入れた過去がある。

 手を合わせたあと、翔吾さんは「4月16日はいつも家族3人でこの場にいたが今年は父がいなく、さみしい気持ちもある。でも晃のそばに父がいてくれると思うと少しほっとするような複雑な気持ち」と語った。忍さんは「本震のあの瞬間の晃の苦しみを思うことで息子の供養につながると思う。私はこっちで家族を守りながら家族と生きていく。主人には『しっかり応援しててね、見守ってね』と言いたい」と話した。【野呂賢治】

毎日新聞

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