港町・神戸ではなく 大津が「コーヒーとパン好き」全国1位の理由

2025/04/17 06:30 

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 人口や気象、各種施設数など大津市にまつわる最新データを網羅した「おおつデータブック2025」が刊行された。大津支局に4月に着任した記者が最も驚いたのは、コーヒーの1世帯あたりの年間支出金額が全国県庁所在地・政令指定都市の52都市の中で大津市が1位とあった箇所。背景を探ってみた。【岸桂子】

 総務省の21~23年の家計調査に基づく順位で、パンも同期間の調査によると年間購入数量が1位だ。早速取材を始めようとしたら、24年単年の家計調査では残念ながらいずれも2位になっていた。出はなをくじかれたが、22~24年平均の同調査では2品目は1位を維持しており、「大津市民にコーヒーとパン好きが多い」は言えそうだ。

 記者がデータブックに驚いたのは前任地・神戸と比較したため。西洋文化をいち早く受け入れてきた神戸には名物喫茶店だけでなく新店も次々に登場。雑誌などで特集されることも多い。

 もっとも、家計調査が対象とするコーヒーとは豆や粉のことだから喫茶店の多寡は関係ないはず。家庭向けコーヒーも多数生産・出荷しているUCCのグループ企業、UCCジャパン(本社・神戸市)の旧知の取材先に相談してみた。ちなみにUCCの飲料工場が愛荘町にある。

 「近畿地区の営業責任者も大津の『1位』歴を知っていましたが、売り上げデータ面で大津における特別なことは見いだせない」との事。県内で80店舗、他府県でも展開するスーパー「平和堂」の広報にも尋ねたが、コーヒーとパン双方で大津市特有の売れ方は「聞いたことがない」だった。

 さらにアプローチしたのは3月にJR大津駅前ひろばで「パンと珈琲(コーヒー)」と題したイベントを主催した「おおつむすびマルシェ実行委員会」の田中亜由美さん。約30ブースでドリップコーヒーやこだわりのパンを販売し、約4000人が訪れ大盛況だったという。

 田中さんは「私自身の分析ではなく、ネットで読み共感した情報」としたうえでこう話してくれた。「大津駅やJR大津京駅周辺のマンションに若いファミリー世代が増えています。この世代の朝食は手軽なパンとコーヒーと思われ、家庭内消費が増えたのかも。私たちのイベントに来てくれた層ともかぶります」。同イベントの次回開催は検討中という。

 「大津は商人の町。高級志向ではなく、コーヒーもスーパーで買い、生活に合った形で家庭で消費するのが中心だと思います」と話してくれたのは、大津市役所前で「カフェ マーベル」を営むオーナーの柴崎早苗さん。同店では農園までこだわった豆を選び、常時数種類のコーヒーやサンドイッチ、ケーキなどを販売している。

 物価上昇は気になるが、記者は“外飲み”コーヒーで大津を楽しみたい。データブックを出発点に、すてきな人たちに出会えた。

 ◇おおつデータブック

 「おおつデータブック2025」は、市の由来のほか、人口動態、環境、観光、財政など過去数年のデータ推移もわかる。2500部作成。希望者には市役所市政情報課や各支所などで無料配布し、市ホームページでも公開している。目片善比古市政情報課長は「市民の方々に、まちについて興味を持っていただき、どんなふうに変化しているのかを知っていただきたい」と話している。

毎日新聞

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