娘に食事与えず共済金詐取 母親に無罪判決 一部は有罪 大阪地裁

2025/04/21 10:03 

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 小学生の娘に食事を与えずに入院させ、共済金をだまし取ったとして、暴力行為法違反(常習傷害)や詐欺、強要未遂罪に問われた被告の母親(35)=大阪府=に対し、大阪地裁は21日、暴力行為法違反と詐欺罪は無罪とした上で、強要未遂罪の成立を認め、懲役6月、執行猶予2年の有罪判決を言い渡した。

 検察側は懲役3年6月を求刑し、被告側は全面無罪を主張していた。

 暴力行為法違反と詐欺罪について、検察側は娘の証言を主要な証拠としていたが、岩崎邦生裁判長は「(娘の記憶が)減退、混合している可能性がある。正確性が疑われ、信用性は認められない」と無罪の理由を説明した。

 一方で、食事を取らせないように娘に働きかけていたとする起訴内容は認め、「子どもを養育すべき立場にありながら、厳しい非難に値する」と述べた。

 起訴状によると、被告は2023年1月下旬から2月上旬、娘に食事を与えず低血糖症にさせた上、下剤を飲ませ、娘を入院させて共済金計14万円をだまし取ったとされた。

 携帯電話で娘を脅して食事を取らせないよう要求したものの、病院側に知られて未遂に終わったとする罪にも問われた。

 検察側は公判で、18年4月から22年6月までの間、娘が37回入院し、うち22回は低血糖症が原因だったと明らかにした。

 娘は、子どもから被害状況を聞き取る「司法面接」を通じて、食事を取らせてもらえなかったことや、下剤を飲まされたことを証言したと主張した。

 娘の証言は極めて詳細で、実際に経験したからこそ語れる迫真的な内容だと指摘。被告が共済金を手に入れるために犯行に及んだとし、「動機は身勝手で娘の絶望感は大きい」と述べた。

 公判では、食事に関する被告と娘の携帯電話のメッセージのやりとりも示された。

 「食べて早くたいいんしたいから」と連絡してきた娘に、被告は「帰ってこなくていいよ。うそつきやから」「食うなよ、寝とけ」と返信していた。

 一方の弁護側は「食べるな」とのメッセージは「叱責の行き過ぎ」にとどまるとした。

 娘の低血糖症については持病に起因する可能性があると反論し、食事を与えなかったり、下剤を飲ませたりした事実はなく、意図的に体調を悪化させて入院させてはいないとした。

 とりわけ検察側が立証の柱に据えた司法面接を問題視。面接時の娘の記憶の正確性には重大な問題があり、別の経験と混同している供述もあって信用できないとし、被告は無罪だと訴えていた。【岩崎歩】

毎日新聞

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