将棋タイトル戦の新定番? 羽田、関空、新千歳…空港対局の魅力とは
将棋のタイトル戦が開催される場所の定番といえば、有名な旅館やホテル、神社仏閣が思い浮かぶ。そんな定番の牙城を崩そうと、新たな対局の場として名乗りを上げたのが空港だ。
タイトル戦が空港で初めて指されて約1年。今年は既に三つの空港で対局が行われることが決まっている。次々と実現する空港対局の魅力とは――。
◇名人戦は羽田→関空
藤井聡太名人(22)に永瀬拓矢九段(32)が挑戦する第83期名人戦七番勝負(毎日新聞社、朝日新聞社主催)は29~30日、第2局が東京都大田区の羽田空港第1ターミナルで指される。続く第3局は5月9~10日、大阪府泉佐野市の関西国際空港内に位置する「ホテル日航関西空港」で予定されている。
羽田空港では前期名人戦の第3局も行われ、囲碁・将棋を通じ、タイトル戦初の空港対局となった。ターミナルビルの会議室に畳20枚を敷いて対局室をしつらえた。飛行機のエンジン音は多少聞こえたものの、藤井名人も挑戦者の豊島将之九段(34)も「気にならない」というレベル。防音パネルが用意されていたが、結局、使われることはなかった。
窓からは行き交う飛行機が見えた。藤井名人は終局後、「飛行機の離着陸の様子がよく見えて、リフレッシュすることも多かった」と初めての体験に満足そうだった。ただ、窓が腰の高さほどだったため、豊島九段は「もっと座高が高かったらよかった」と語り、座った状態だと滑走路が見えないことを残念がってもいた。
◇防音に防振、備えはバッチリ
関西国際空港は2024年9月、開港30周年を迎えた。泉佐野市は「全日本アマチュア将棋最強戦」を7年連続で開催するなど、将棋振興に力を入れてきた。今回、開港30周年記念事業と市のPR、将棋振興を兼ねて名人戦を誘致した。
対局室はホテル日航関西空港の最上階、11階にあるパーティールーム「ジェットストリーム」だ。幅16メートル、奥行き11メートル、立食なら80人まで収容できる広さがある。目を引くのは足元から天井までの大きな窓。びょうぶは窓の反対側に置かれるので、眺めを遮ることはない。
窓際から4メートルほど離れた場所に畳15枚を敷き、対局者は座ったままでも思う存分、窓の外を眺めることができる。飛び交う飛行機ももちろん目に入る。
ホテルだけに、防音は万全だ。ただ、対局をネット中継するスタッフから「盤面を撮る天井のカメラが揺れる」と指摘があった。高さ30センチほどの土台の上に畳を敷くことで床の揺れを軽減させ、更に振動に強い「トラス」と呼ばれるやぐらを組んでカメラを据え付けるなど、防振対策もバッチリだ。
第3局の準備に携わる泉佐野市の大引要一生涯学習課長は、対局日程を見て空港対局が続くのを知った。「驚きました。対局中には第1滑走路の離着陸の様子が見える。対局者の控室からは第2滑走路だけでなく淡路島や明石海峡大橋も見えるので、おやつを食べながらリフレッシュできるはず」と自信をのぞかせる。
今期の七番勝負を前に、藤井名人と永瀬九段にも空港対局への思いを聞いてみた。
経験者の藤井名人は「愛知県に住んでいて関空にはなかなか行くことがないので、どんな感じなのか楽しみにしています」と期待。地元・愛知県の中部国際空港(愛称・セントレア、常滑市)でも対局したいかと問われると、「セントレアはかなり行っているので……」と苦笑した。よく知る場所より、訪れる機会が少ない場所の方が新鮮な気持ちで対局に臨めるようだ。
永瀬九段も自身初の空港対局に興味津々で、注目の開催地に第2、3局を挙げた。「飛行機の知識はないんですけど、これを機に少し勉強したいと思います」と声を弾ませた。
◇王位戦は新千歳で
空港対局は名人戦にとどまらず、ほかのタイトル戦にも広がりを見せている。新聞三社連合は22日、主催する王位戦七番勝負の第3局(7月29、30日)を北海道千歳市にある新千歳空港内のホテル「ポルトムインターナショナル北海道」で開催すると発表した。
ホテルは20年2月に開業した。新聞三社連合の一員である北海道新聞によると、ホテル側から「コロナ禍での開業でアピール不足なので、タイトル戦を開催してPRしたい」と誘致を受けたという。
さまざまな空港で繰り広げられるタイトル戦。トップ棋士が見せる名勝負が序盤でどう離陸し、どのような着地を見せるかも注目だ。【丸山進】
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