奇妙な動きの惑星発見 スター・ウォーズの世界のような連星が影響か

2025/05/04 06:30 

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 映画「スター・ウォーズ」に登場する、二つの「太陽」を持つ架空の惑星「タトゥイーン」。物語の主人公が二つの夕日を見つめ、宇宙への旅立ちを決意するシーンは印象的だ。同様の惑星は実際の宇宙にも僅かだが存在する。その中でも研究者らが「史上最も奇妙」という動きをする惑星の存在が証明された。更に二つの太陽が他に例のない動きをすることに影響しているという。どんなフォース(力)が働いているのか。

 奇妙な動きが分かったのは「2M1510(AB)b」と名付けられた、太陽以外の恒星を回る「系外惑星」。英バーミンガム大の博士課程学生、トーマス・ベイクロフト氏らの研究チームが、南米チリにある欧州南天天文台(ESO)の大型望遠鏡VLTなどを使った観測で恒星の動きを解析し、米科学誌サイエンス・アドバンシス電子版に17日、発表した。

 この惑星は、地球からはてんびん座の方向に約120光年離れ、質量が小さく光が弱い恒星(褐色矮星(わいせい))二つからなる連星を「垂直」に回っている可能性が高いという。惑星は多くが、連星の公転軌道の面とほぼ平行して回るが、90度異なることになる。

 更に連星自体も互いに平行して公転しているのではなく、公転軌道の角度が徐々に変わっていた。それぞれが通常と異なる動きをする、連星と惑星の組み合わせの発見も初めてだという。

 この連星の存在は2018年に判明。研究チームは詳細な観測を通じて連星がなぜ特異な動きをするのか、さまざまな仮説を立てて検証した。その結果、外側を垂直に周回する惑星が存在し、互いの重力となる「フォース」が影響し合わなければ説明がつかないと結論づけた。惑星はまだ直接観測できていないが、観測ができれば質量や公転周期も分かるという。

 また、この恒星は太陽ほど大きな光や熱を出さないため、惑星の地表では「昼間でも月光が2倍に降り注ぐような明るさ」(ベイクロフト氏)という。惑星に生物がいる可能性は低いが、ベイクロフト氏は「地表から二つの『太陽』の動きを連日記録すれば、二つがダンスしているように見えるはず」と話す。

 さらに「誕生の経緯も調べ、タトゥイーンとの比較も試みたい」と応じた。

 系外惑星研究が専門の須藤靖・高知工科大特任教授(宇宙物理学)は「この宇宙は私たちが知らないことで満ちている。予想もしない“奇妙な動き”を示すこの惑星系もその一端が見えた例だ」と、今回の発見成果を解説した。【荒木涼子】

毎日新聞

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