「怪しさ98%」と判断 信金職員、ロマンス詐欺から60代男性救う

2025/05/09 06:15 

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 出会い系アプリで知り合った女性に10万円を振り込もうとした60代の男性をロマンス詐欺の被害から救ったとして、群馬県警富岡署は8日、しののめ信用金庫下仁田支店の神宮久美子係長(51)に感謝状を贈呈した。顧客と顔を合わせての丁寧なやりとりを踏まえて「怪しさは98%」と判断。県警への通報につなげた。【加藤栄】

 「銀行に振り込みたいんですけど、振り込めますか」。4月25日午後3時半ごろ、支店の現金自動受払機(ATM)に備えつけられた受話器型のインターホンを通じて、男性の声がした。連絡を受けた神宮係長は「振り込めます」と答えつつ、すぐさまATMに向かった。

 振り込みの目的について、男性は「外貨への両替」と語った。支店では取り扱いの少ない案件。違和感を覚えた神宮係長は、質問を重ねることにした。

 男性は「昨日からSNSでやりとりしている女性に、10万円を振り込む」と言う。許可を得てメッセージを見せてもらうと「こんにちは」から始まり、「公式」と題された文章やドル円の相場、送金方法の選択肢が示されていた。

 神宮係長は悩んだ。「詐欺か、本当か。振り込めば利益を得られるのかもしれないが、振り込んでしまったら戻ってこない」

 その上で、男性の置かれた状況を検討し「怪しさは98%」と判断。支店内に案内し、さらに丁寧に話を聞くことにした。移動する際、男性もぽつりとつぶやいた。「詐欺ですかね……」

 支店内でも詳細を聞き取り、支店長や次長にも相談。そして、警察へ連絡した。ATMからの連絡を受け、約30分がたっていた。相手の女性の名前をインターネットでも調べてみたが、外貨投資などに関する情報は出てこなかったという。

 富岡署によると、男性は今年2月ごろ、出会い系アプリを通して高崎市の女性を装う人物と知り合い、やりとりを始めた。支店を訪れる数日前に「食事や映画でも見に行きましょう」と誘われ、別のSNSに移行した後に振り込みに誘導された。「10万円を振り込むことで、1日1000円の利息を得られる」と言われていたという。

 神宮係長は「(男性が)私の対応に怒って帰ってしまい、別の金融機関で送金されることがなくて良かった」とほっとした表情を浮かべた。県警から感謝状を受けとるのは2回目といい、「今後も、警察に通報『しない』理由を探さず、お客様のやりとりについて100%確信が持てない場合は警察に頼る」と話した。

 感謝状を贈呈した蛭川斉・富岡署長は「普段から意識して行動してもらっていたから、今回の未然防止につながった。引き続き警察をうまく活用してほしい」と述べた。

毎日新聞

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