箱根町が宿泊税導入へ 2028年4月から 全国初「普通税」も視野

2025/06/11 12:45 

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 神奈川県箱根町の勝俣浩行町長は10日、町議会定例会で、宿泊税を2028年4月に導入する意向を表明した。観光が町の基幹産業だが、オーバーツーリズム(観光公害)による負担が財政を圧迫。税の使途を観光施策だけに限る「目的税」ではなく、それ以外にも使える全国初の「普通税」での導入も視野に入れている。

 勝俣町長は導入理由について「町民や事業者が安心して日々を過ごし働ける町、そして観光客が何度来ても良かったと言ってもらえる施策を推進するために必要不可欠」と述べた。

 箱根町は人口約1万1000人。24年は6年ぶりに観光客が2000万人を超え、うち宿泊客は398万人を占める。500以上の旅館やホテルがあるほか、民泊施設も増えている。

 町は入湯税としては全国一の収入があるものの、観光客によるごみやし尿処理、消防救急などの観光施策以外の財政負担が重くのしかかる。手を打たなければ29年度には約10億円の歳出超過になる見込みだ。

 町は19年に有識者らでつくる「観光まちづくりの充実・維持に係る財源のあり方に関する検討会議」を設置。観光施策だけでなく、社会インフラなどの整備費用にも充てられる「観光まちづくり財源」を観光客から徴収する方策について、これまで13回にわたって議論を重ねてきた。入湯税引き上げなども検討したが、「宿泊税の導入が妥当」とする中間報告書を今年5月に町へ提出した。増収は年間5・9億~13・3億円程度と試算し、入湯税も維持する予定だ。

 総務省によると4月21日現在、宿泊税を導入している自治体は東京都、大阪府、福岡県と7市2町。このほかに2県9市1村が26年4月1日までに導入する予定。ただ、いずれも目的税で税収は観光施策への使途に限定されている。

 一方、箱根町は一般財源となる普通税での導入も選択肢に入れている。自治体が地方税法以外の税を徴収する場合は総務相との協議・同意が必要となる。総務省の担当者は普通税での導入可能性について「条例案可決後に協議が始まる仕組みなのでコメントできない」と話した。【本橋由紀】

毎日新聞

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