成田空港の土地明け渡し請求認める 仮執行は認めず 千葉地裁

2025/06/16 21:31 

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 成田国際空港会社(NAA)が空港反対派らに、空港拡張予定地内にある小屋などの撤去と土地の明け渡しなどを求めた訴訟で、千葉地裁(斉藤顕裁判長)は16日、請求を認める判決を言い渡した。ただし、強制執行が可能になる仮執行は認めなかった。反対派らは控訴する方針。

 NAAが求めたのは、建設中のC滑走路とターミナル地区を結ぶ誘導路を計画している芝山町香山新田の土地の明け渡しと、ここに建つ「三里塚・芝山連合空港反対同盟旧熱田派」の小屋などの撤去。土地のほとんどをNAAが所有しているが、一部を同派代表世話人の柳川秀夫さん(77)ら4人が反対運動のため「一坪共有地」として所有し、小屋を「横堀農業研修センター」などとして使用している。

 NAAは「(小屋は)無断で建設された」などと指摘し、土地の取得は「空港建設を進めるために必要不可欠」と訴えた。

 反対派は「新滑走路を建設する必要はなく、(一坪共有地の)土地を使用しなくても建設は可能だ」と反論。1990年代に「新東京国際空港公団(NAAの前身)があらゆる意味で強制的手段は取らないと公約している」と信義則違反を主張していた。

 判決で斉藤裁判長は、「強制的手段」とは土地収用法に基づく収用手続きを想定したもので、「旧公団が民事訴訟手続きによる権利の実現をしないと表明したとは認められない」と判断。一坪共有地について、NAAにほとんどの持ち分があり、C滑走路の建設も合理的な理由があるとして、NAAに「単独取得させるのが相当」と結論づけた。

 閉廷後、柳川さんは千葉市内で開かれた集会で「一方的に押し切るやり方は時代遅れだ」と判決を批判。NAAは「機能強化の実現に向け、本判決の意義は大きい」とする田村明比古社長の談話を発表した。

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 判決は滑走路の新増設を柱とする拡張計画を進めるNAAにとって一歩前進と言える。だが、今後も用地買収は難航が予想され、予定通り2029年3月にC滑走路の運用を開始できるかは不透明だ。

 拡張により空港用地は1198ヘクタールから2297ヘクタールとほぼ倍になる。新たな用地の7割近くが民有地で移転対象は約200戸、総地権者数は少なくとも約1600人に上る。NAAは計画が国に許可された2020年1月以降約200人体制(今年3月時点)で用地買収を進めているが、民有地の確保率は3月末時点で74%にとどまる。

 一方、未買収地は現在の空港用地にも11カ所計2・9ヘクタール残る。こちらの買収も進まなければ、2030年代前半から段階的に旅客施設を新たなビルに集約する「ワンターミナル構想」に支障が出る。

 国は1993年に土地収用法による強制収用を放棄。民事訴訟による明け渡し請求手続きが進められている。しかし、訴訟が長期化する傾向にあり、計画の見直しを迫られる可能性がある。【合田月美】

毎日新聞

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