「島外避難は困難」の声も “希望者は避難方針”で決断迫られる住民

2025/07/03 21:30 

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 「気象災害と違って地震は終わりが見えない。島の住民の積み重なった心的疲労は相当のものだろう」。悪石島での震度6弱の観測を受け、3日夕、鹿児島市にある鹿児島県十島村役場で記者会見した久保源一郎村長は険しい表情で語った。「島には牛を飼っている農家など、避難したくても避難できない人もいる。地震がいつまで続くか分からないのは本当につらいだろう」とも話した。

 十島村は悪石島の住民のうち希望者は島外に避難させる方針を決め、避難先として想定する鹿児島市の宿泊施設の空室状況を調べている。

 島に住む漁師、有川和則さん(73)は地震発生時、軽トラックに給油するため島内のガソリンスタンドにいた。車を止めた時に突然、揺れが襲ってきた。車は給油機にぶつかり、有川さんは車の天井に頭をぶつけた。道路の電柱は「倒れるか、抜けるか」と思うほど揺れた。「縦横に複雑な揺れが20秒くらい続いた。今まで感じたことのない恐怖だった」

 防災無線で学校のグラウンドへの避難が呼び掛けられ、有川さんは自宅に戻って妻を車に乗せて向かった。グラウンドには大半の島民が集まっていたとみられ、「大丈夫だった?」などと声を掛け合った。村の職員らから、希望者は島外避難ができるとの説明があった。

 妻は体調が優れず、有川さんは「島外への避難は難しい」と話す。連日の昼夜を問わない地震で島民の疲労はピークに達している。「もう地震は来てほしくない。早く収束してほしい」と願った。

 トカラ列島近海ではこれまでも度々、群発地震が発生している。2021年12月9日には悪石島で震度5強を観測し、当時の島民75人の4割に当たる12世帯30人が2日後の11日から鹿児島県奄美、鹿児島両市のホテルや親戚方など島外に避難した。地震の回数が減少したことから約2週間後以降に帰島した。【取違剛、平川昌範、田崎春菜】

毎日新聞

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