「デマや差別許されない」 NGOが選挙中のヘイトスピーチに警鐘

2025/07/09 06:45 

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 参院選で排外主義的な政策を掲げる政党が増え、選挙を利用したヘイトスピーチが増える可能性がある。東京都内で8日、外国人や難民の人権問題に取り組むNGOが記者会見を開き、「選挙期間中にデマや差別は許されない」とし、選挙を利用した差別的言動に警告を発した川崎市に習うべきだ、と訴えた。【矢野大輝】

 県内では川崎市が20年、外国ルーツの市民に対するヘイトスピーチに刑事罰を科す条例を施行した。しかし、全国的にも候補者が演説や街宣、SNSを利用して根拠のない外国人批判や憎悪発言を繰り返す事例が絶えない。

 川崎市は7日、SNS(交流サイト)上で同条例の内容を紹介した上で、「選挙運動、政治活動の自由は、民主主義の根幹をなすものですが、(中略)不当な差別的言動を行う事は、条例により禁止されています」と警告した。

 外国人人権法連絡会事務局長の師岡康子弁護士は、選挙期間中の川崎市の取り組みは大切だとし、「このような発信を他の地方公共団体や国も行うべき」と述べた。

 参院選公示日の3日、神奈川選挙区の候補者が街頭演説で生活保護の支給を巡り「日本人が困っているのに外国人ばっかりというのはおかしい」と述べた。厚生労働省の統計によると、4月時点で外国人の生活保護受給率は全体の約3・2%、外国人世帯の受給率は約2・9%だった。

 一般社団法人「つくろい東京ファンド」の大澤優真さんは、「外国人は生活保護を受けやすい」といった言説は根拠が乏しく、誤りであることを指摘。その上で「デマが元になった議論はしてはいけない。冷静に事実をおさえてほしい」と話した。

 出入国在留管理庁によると、2024年末時点の在留外国人は376万8977人で、前年末比で10・5%増加し、過去最多を更新した。参院選では複数の政党が外国人の受け入れ制限や厳格化を公約に掲げた。

 会見で師岡弁護士は「多くの選挙演説の場で外国人に対する排外主義があおられており、外国人から、毎日恐ろしい思いをしていると聞いている」と明かした。その上で「私たち有権者は、責任を持って(現状を)変えていくべきだ」と訴えた。

毎日新聞

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