<町へ出よう書を探そう>並ぶ本は百鬼夜行のにぎやかさ 寺で開く週1の「夜行書店」 盛岡
夕闇の迫った本堂に上がると、内陣は金色の光に満たされていた。ご本尊の阿弥陀(あみだ)如来と対面し、思わず手を合わせる。両脇には、親鸞、聖徳太子、蓮如らの掛け軸がかけられている。
盛岡市の騎雲山専立寺は城跡の北に位置する寺町通りに面し、鎌倉期の1250年開山とされる。その古刹(こさつ)が毎週金曜日の夜になると、別の顔を見せる。
阿弥陀様に見守られた2階まで吹き抜けの本堂右半分に、折り畳み式の机がずらり。平置きされた約200冊の新刊本は、小説、スポーツ、風俗ものとジャンルを問わない。その名も「夜行書店」。まるで百鬼夜行のにぎやかさだ。
「寺は『死』によって成り立っています。だから、あらゆる人に常に開かれていなければならない」と、店長を務める28代目の住職、日野岳史乗さん(40)は強調する。
地元の老舗・さわや書店からの委託販売の形で選書もほぼ任せており、日野岳さんは「本屋もどき」と言い切る。来客が数人ほどの夜もあるが、気にしない。立ち読みだけでなく、片隅に置かれたピアノを弾いてもらってもいい。
自身がこだわるのはエロ本。「隠さなくても、いいじゃないですか。『エロ』にも置き場があるべきだ」としつつ、「動画サイトに押されてなのか、入手しづらい。出版文化の危機の一端を感じます」と苦笑する。
そんな自称「なまぐさ坊主」は少年期、寺の子供に生まれたことを深く考えていなかった。それでも父親が楽しそうにお勤めをする姿が強く印象に残り、真宗大谷派の大谷大文学部哲学科(京都市)に進学。住職となる資格を取得し、2018年に父親が死去するとこの寺の住職になった。
一方で日ごろから、寺は神社に比べて開かれていないと感じていた。「すき間、あるいは空き地として、人が気軽に立ち寄れる場所を作りたかった」。父親を手伝っていた頃から、本堂でライブコンサートを開くなどの試みをしてきた。
それが書店という形に発展したのは21年6月。きっかけは新型コロナウイルスだという。感染を恐れて門を閉ざす寺に「情けない」と怒りが湧き上がった。
「やるのは居酒屋でも良かったが、それでは『密』になるので」とニタリ。そのうえで、書店は「寺の在り方の発露。誰もが気軽に訪れることができ、誰も排除することがない」と表情を引き締めた。
日野岳さんは10年余り前から、髪形はモヒカンを貫いている。そして顎(あご)ひげ。初対面の人などに驚かれることもあるが、意に介さない。権威じみた身なりをして、権威を押しつけるのは大嫌いだ。お布施に頼らず、寺を守ることはできないかとも思う。
「あなたがどう受け止めるかが大切です」。それが正解か、不正解かは問わない。同調、同意も必要ない。「大事なのは、キャッチボールが生じること。僧侶でなかったら、この髪形ではないですよ」。並んだ雑多な本を横目に、いたずらっ子のようにほほ笑んだ。
かすかに漂う抹香に包まれながら、時に本を手に取り、住職の法話に聴き入る。それも至福かもしれない。【高橋昌紀】
◇日野岳史乗さんお薦めの3冊
▽長谷邦夫「バカ式」(曙出版)
▽赤塚不二夫「天才バカボン」(講談社など)
▽楳図かずお「漂流教室」(小学館)
◇夜行書店
盛岡市名須川町3の17(騎雲山専立寺)。電話019・622・1066。通常の開店時間は金曜午後6時半~10時半。
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