大津地裁、捜査資料が検察にあれば起訴なかったと指摘 元看護助手訴訟
滋賀県東近江市の湖東記念病院の入院患者死亡を巡り、再審無罪となった元看護助手の西山美香さん(45)=同県彦根市=が、違法な捜査があったとして県と国に計約5500万円の賠償を求めた訴訟の判決で、大津地裁は17日、県側に約3100万円の支払いを命じた。池田聡介裁判長は「警察官は供述を誘導し、西山さんの弁護人に対する信頼を失わせるような言動をして虚偽自白を維持させた」と述べ、違法な取り調べがあったと認めた。国側への請求は棄却した。
西山さんは質問に誘導されやすい「供述弱者」の特性があり、西山さん側は、警察官が恋愛感情を利用して西山さんをマインドコントロール下に置き、虚偽自白を誘導したと訴えていた。
判決は、取り調べの当初に西山さんは呼吸器の詳しい機能について言及していなかったのに、県警の捜査に応じて供述が具体化していったと指摘。警察官が「両親は弁護士ではなく警察を信用している」などとけしかけていたことにも触れ、「西山さんに不当な誘導をして虚偽自白させた。真相を明らかにすることを目的とした刑事訴訟法に反する行為だ」と認めた。
さらに入院患者がたん詰まりで死亡した可能性もあるとする捜査資料が大津地検に送られていなかったことを挙げて、虚偽自白がない状態で、捜査資料が検察庁に送られていたならば西山さんは起訴されなかったと言及。「捜査資料の送致を怠ったことは警察の職務上の法的義務に反する」として、この点も違法だったと判断した。
西山さん側は検察側の起訴は違法だったとも訴えていた。しかし判決は、容疑者が取り調べ担当の警察官に恋愛感情を抱くことは普通のことではなく、西山さんが警察官の関心を引くために虚偽自白をしたことを、検察側が推し量ることはできなかったとして国側の賠償責任を認めなかった。
県警は「今後の対応を検討する」、大津地検は「主張が認められたものと考えている」とのコメントを出した。【礒野健一、菊池真由、飯塚りりん】