「にんげんをかえせ」原爆詩人・峠三吉 遺品ににじむ悲憤と執念
「にんげんをかえせ」の一文で知られる「原爆詩集」を著した広島の詩人、峠三吉(1917~53年)は、たった1冊残した代表作に続いて何を世に問おうとしたのか。遺品にあった未発表の詩や散文、短編小説などの草稿やメモの整理を進めると、原爆を投下した米国による被爆者調査への怒りが浮かび上がってきた。原爆詩人の創作過程をうかがわせる資料の解析は被爆80年の夏も続いている。
市民団体「広島文学資料保全の会」が、峠の遺族から2015年に預かった草稿やメモ類、書簡など50点以上を読み解いている。わら半紙などに書かれた草稿には推敲(すいこう)を繰り返した跡が残り、鉛筆で文言を走り書きしたメモもある。
◇何度も登場「ABCC」
「保全の会」の池田正彦事務局長は、草稿やメモに何度も登場する「ABCC」に注目する。米国が47年に設立した「原爆傷害調査委員会」の略称で、「調査しても治療せず」と被爆者や市民から批判があった。メモには「原爆症」「不安」「白血病」といった言葉とともに、「ABCCえの怒り」(原文ママ)などとあった。
ABCCは50年11月に広島港に近い宇品地区から市街地の小高い山・比治山に移転。その後の情景がメモや草稿に記され、書かれた時期は51年9月に自費出版で「原爆詩集」が刊行された前後に当たる。
峠は当時、比治山と京橋川を挟んだ対岸にある市営の「平和アパート」4階に暮らしていた。「原爆詩集」に収められた詩で、ABCCに触れた箇所はわずか。池田事務局長は「川向こうのABCCを題材にした詩を新たに書こうとしていたのでは」と推測する。
◇命を懸けた創作活動
今回整理した1編で「アメリカへの手紙」と題された詩の草稿には、冒頭部分に「頂上に灯を煌(きら)めかすABCC」とあり、後半では「私たちは歩いてゆく/白血病の子を背負い/そしてあなた達は降りてくる/高級車の奥に死を乗せて」と続き、悲憤がにじみ出る。
当時の峠は反戦文化運動に情熱を傾ける一方、被爆者による組織の先駆けだった「原爆被害者の会」の結成(52年)にも奔走していた。会はABCCに批判的だった。肺を病んでいた峠は53年3月、健康体を取り戻そうと臨んだ手術中に容体が悪化し、36歳で世を去った。整理中の資料には、峠の病床に張ってあった旧ソ連の作家、オストロフスキーの詩の一節や、峠の死を親族に伝えた電報などもあった。
峠は「原爆詩集」の次作に「叙事詩広島」を構想していたとされる。池田事務局長は「残された資料の整理は、峠が命を懸けた創作活動への思いを知ることだ」と話している。【宇城昇】
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