高速道路で死亡事故相次ぐ “暫定対面通行区間”の怖さと注意点
8月となり、レジャーや帰省など、高速道路を使って遠出を計画している人も多いだろう。高速道路と言えば、徳島自動車道や松山自動車道で7月中旬に正面衝突による死亡事故が連続した記憶も新しい。タイヤのバーストがきっかけとの疑いもある徳島自動車道での事故現場は対面通行区間で、上下車線間に樹脂製の「ラバーポール」があったものの、対向車線への車両飛び出しを防げなかった。同じ構造の高速道路は地方を中心に各地にあり注意が必要だ。
◇暫定供用区間、四国に160キロ
四国4県には、西日本高速道路(NEXCO西日本)運営の高速道路が六つあり、総延長は約480キロに及ぶ。このうち、全線が4車線化されているのは、高松自動車道(鳴門インターチェンジ―川之江ジャンクション)だけで、徳島自動車道を含む5道路には、暫定的な対面通行区間がある。
「暫定的」なのは、いずれは上下各2車線とする計画で、将来上り線か下り線となる2車線を、上下各1車線として運用しているからだ。NEXCO西日本によると、こういった暫定供用区間が、四国内には計160キロ近くあるという。
◇ワイヤロープで
4車線区間では、上下車線の間に中央分離帯やガードレール、コンクリート壁など、飛び出し防止効果の高い構造物が設けられる。一方、対面通行区間の上下車線間にあるのは、ラバーポール(車線分離標)やワイヤロープが多い。
ラバーポールなどのメーカーで作る「日本視線誘導標協会」のサイトでは、ラバーポールを「高速道路、一般道路での車を安全に誘導するために……」などと紹介する。ドライバーに道路の位置を知らせて、安全運転してもらうのが主な目的で、高速走行車の対向車線飛び出しを防止する機能はない。
一方、ワイヤロープ設置は2017年に始まり、国土交通省の公開資料によると、23年3月までに全国の設置区間で3716件の接触事故が発生したが、対向車線への飛び出しは10件(0・27%)にとどまり、死亡事故はゼロ。対向車線への飛び出し減少や死亡事故防止に高い効果がある。NEXCO西日本も22年までに四国内の計56キロにワイヤロープを設置した。対面通行区間の全てが危険なわけではないのだ。
◇設置困難区間も
だが、トラックと高速バスが正面衝突して、乗員乗客ら14人が死傷した徳島自動車道の事故現場(徳島県阿波市)に設置されていたのは、ワイヤロープでなく、ラバーポールだった。なぜ、ワイヤロープが設置されていなかったのか。
実は事故現場が橋りょう部だったためだ。ワイヤロープには大型車が接触しても対向車線への飛び出しを抑える機能があるが、徳島県高規格道路課によると、ワイヤの端を路面に固定する際、路面下3メートル近くまで部品を設置する必要がある。ところが、橋りょう部では、舗装の下にある基礎部分の「床版(しょうばん)」を傷める恐れがある。このため、部品を橋りょう外に設置できる比較的短い橋りょうを除き、ワイヤロープは設置できないという。比較的浅い舗装面地下に排水溝などの構造物があるトンネルも同様だ。
四国では、対面通行区間計約157キロのうち、ワイヤロープ設置区間を除いた計約100キロ(64%)が、長いトンネルや橋りょう部で、主にラバーポールで上下車線を区切っている。徳島自動車道は47キロと四国全体の半分近くを占める。長いトンネルや橋りょうの割合が高いためだ。
◇ブロックやパイプなどに期待
「主に」としたのは、ラバーポールではない対策が施された区間もあるからだ。それは、高知自動車道・針木トンネル(高知市)などで、24年度に設置されたセンターブロックだ。上下車線間に、鉄筋コンクリート製の壁部材を並べて固定する仕組みだ。2本の丸形鋼管からなる鋼製構造物を固定する「センターパイプ」とともに、全国各地の対面通行区間に試行設置されている。ともに、飛び出し抑止効果があり、ドライバーに与える安心感や走行速度などをワイヤロープと比べる検証が進められている。
◇健康管理、休憩、制限速度……
だが、こういった道路改良には時間がかかる。では、ドライバーが今日から取れる対策は何か。徳島県警高速隊の藤田和夫指導官は、タイヤの状態を含む車体の運行前点検に加え、健康管理と十分な休憩、制限速度の順守などを呼び掛ける。
健康管理や休憩を挙げるのは、居眠りなどによる飛び出しもあるからだ。藤田指導官は「暑い時期でもあり、しっかり前方を見て、ハンドルを握り続けるには、時々休憩を取ることも大切」と話す。
さらに、制限速度の順守も重要だ。対面通行区間の制限速度は時速70キロで、対向車を含め双方が時速70キロで走っていても、飛び出して正面衝突すると、時速140キロの衝撃となる。速度が2倍になると、運動エネルギーは2乗に比例するため、時速140キロでは時速70キロの際と比べ、衝突時の衝撃は4倍になる。当然、70キロを超えていれば、それ以上の衝撃となり、重大事故につながる。事故時の衝撃を少しでも軽減させる点からも、制限速度順守はわが身を守る第1歩となる。【植松晃一】
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