観光列車「リゾートしらかみ」で訪れる JR五能線、沿線の夏
青森県と秋田県にまたがる世界自然遺産・白神山地の西を通り、日本海の絶景が次々に広がるJR五能線。その魅力を全国に発信しようと、JR東日本秋田支社が開催したメディア向けのツアーに参加した。同支社は「五能線の名前は首都圏には浸透してきたものの関西や西日本ではまだ不十分。青森側からも気軽に乗れることも改めて伝えたい」としている。観光列車「リゾートしらかみ」に乗って「五能線・沿線の夏」を紹介したい。
◇東北新幹線からの乗り換えも便利
五能線は秋田県の東能代駅と青森県の川部駅を結ぶ約147キロのローカル単線。約80キロが海岸線で、変化に富む絶景が次々に姿を見せ、飽きることがない。
ここを走る観光列車が「リゾートしらかみ」だ。「橅(ぶな)」、「青池」、「くまげら」の3本の列車が運行し、四季を通じて広い窓から外観が楽しめる。秋田駅と青森駅を結んでおり、青森駅の一つ隣が新青森駅だ。つまり東京の観光客は東北新幹線から「リゾートしらかみ」にすぐに乗り換えられる。
7月末のツアーは、秋田駅から乗車した。東能代駅で進行方向が変わり、バスケットボールの名門校で知られる県立能代科学技術高校(旧能代工業高校)の最寄り駅の能代駅では「バスケの街」にちなみ、ホームにバスケットゴールがあった。1回目でシュートが成功すれば記念品がもらえる。
◇青森県側に入ると
あきた白神、岩館駅と北上し、青森県側に入って停車したのが「十二湖駅」。ここは白神山地のふもとにある33の湖沼群で、特に「青池」は湖の底の倒木が見えるほど透明だ。地元の宿泊施設「アオーネ白神十二湖」のガイド、板谷正勝さん(83)は「ただ通りかかるだけでなく、泊まってもらえれば海や山の幸が食べられますよ」と教えてくれた。十二湖駅と青池付近の移動は予約すれば無料バスも利用できる。
深浦駅を経由し、夕方に着いたのが「千畳敷駅」。江戸後期の1792(寛政4)年に起きた地震で岩が隆起してできた岩浜が広がり、かつてこの地を治めた津軽藩の殿様が千畳の畳を敷いて宴が開かれたとされる。ここで列車は約15分間停車し、岩場を歩き回ることもできる。
列車は秋田駅を出発してから約7時間後、鰺ケ沢駅に到着。近くの「ホテルグランメール山海荘」の窓からじっと外を眺めた。大海原に赤々と光る夕日を見ながら、日常から離れ、改めて元気をもらった気がした。
◇ローカル線やバスで足を延ばせば…
JR五能線はそのルートの車窓だけでも飽きないが、駅からさらに車やローカル線で足を延ばせば青森・津軽地方の観光スポットにも事欠かない。ツアーではバスに乗り、朝から夕方までの1日で6カ所も回ることができた。
鰺ケ沢町内から北にバスで30分ほど移動すると、津軽半島の西に社殿を構える「高山稲荷神社」(青森県つがる市)に着いた。高さ2メートルほどの朱色の鳥居が立ち並ぶ。中をくぐって上ると、絶景が広がる。こうした鳥居の列は京都の伏見稲荷大社が有名だが、青森にもあったとは。青空の下で鳥居の色が一層際立っていた。
◇太宰治の生家にも
そこからバスで20分ほど東に進むと、見えてきたのが「太宰治記念館 斜陽館」(五所川原市)。明治の大地主、津島源右衛門が当時経営中の金融業店舗を兼ねた住宅として建てられた。作家・太宰治の生家でもある。学芸員の白川雅子さんによると、太宰の作品は中国語でも翻訳され、近年は中国や台湾からの見学者も少なくない。「思春期に太宰の作品と出会い、若い時に来られなかったがリタイアしてやっと来られた、というシニアの方も多いです」と話す。
青森には各地に縄文時代の遺跡がある。この一つが「亀ケ岡石器時代遺跡」(つがる市)だ。ここから出土したユニークな「遮光器土偶」は「しゃこちゃん」の愛称で親しまれ、地元の木造(きづくり)駅入り口には土偶の巨大な像も建つ。列車の到着に合わせて目が七色に光り、駅舎自体が地元の名所の一つだ。ここから少し足を延ばせば、津軽富士見湖にかかる全長300メートルの日本一長い、木造三連太鼓橋「鶴の舞橋」(鶴田町)も近い。橋の背景に見える岩木山の雄大さが目を引く。
◇自分流にアレンジ「青森のっけ丼」
食事は生鮮市場で好みの刺身をつまんで自分流にアレンジする「青森のっけ丼」が人気だ。五所川原市の「マルコーセンター」で名物「のへ丼」を注文した。光り輝く刺身をじっくり見ながら、改めてここは海の幸の宝庫だと実感する。
◇音楽好きなら…
一方、津軽の土地柄にゆかりが深いのが「津軽三味線」と、地元出身のシンガーソングライター、吉幾三さんだろう。
津軽三味線は「リゾートしらかみ」の車内や観光施設「津軽藩ねぷた村」(弘前市)、各地のホテルなどで生演奏を聞くことができる。「ねぷた村」の建物に入ると、津軽三味線の世界大会で優勝した多田智大さんが力強い音を響かせていた。ねぷた村の須々田敬文・企画営業部長は弘前の魅力について「城下町ですが洋館もたくさんあっていわば『和洋折衷』の街。外国人も増えています」と話す。
音楽好きなら、先のマルコーセンター近くにある「吉幾三コレクションミュージアム」にも足をのばしたい。楽曲づくりで使ったギターや衣装、直筆の書などが展示され、吉さん本人をより身近に感じられるはずだ。
「地元を離れた人も、岩木山が見えてくると『ああ、ふるさとに戻って来たんだ』という気がします」と青森市のガイド、沢口静江さん。津軽を歩き、岩木山を眺めていると、吉さんの曲を歌いたくなった。【工藤哲】
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