<815プラス>強制連行され過酷労働 帰国の途で沈んだ朝鮮人ら 浮島丸爆発・沈没
7月下旬、青森県・陸奥湾の波は穏やかだった。その日も同じだったのだろうか。
「終戦」から1週間後の1945年8月22日、現むつ市の大湊港はごった返していた。朝鮮人労働者やその家族ら約4000人を乗せた海軍輸送船の浮島丸(4730トン)が、韓国・釜山に向けて出発したのだ。
「あのへんに船が停泊し、桟橋からはしけで乗客を運びました。港に大勢の人がずらっと並んでいたそうです」。市民団体「浮島丸下北の会」会長の村上準一さん(78)=同市=は沖合を見やった。
だが、浮島丸は同24日、京都・舞鶴湾で爆発・沈没した。米軍が敷設した機雷に触れたとされる。政府発表で日本人船員25人を含む549人が死亡した。
青森で生まれ育った村上さんだが、この「事件」を知ったのは高校の教師になってからだった。「そもそも、なぜ青森に多くの朝鮮人がいたのか。疑問がわきました」
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戦時中、青森県に労務や軍務で動員された朝鮮人について、歴史研究家の竹内康人さんは「内務省の特高警察資料で7900人、大湊海軍警備府の資料で海軍施設協力会に9000人、海軍軍属個表では4500人などの記録がある」と説明。青森県史は、県内に約2万1000人の朝鮮人が強制連行され過酷な労働に従事していたと記載している。
大湊には北方の軍事拠点・海軍警備府があり、津軽海峡の守りのため下北半島の要塞(ようさい)強化や半島北端の大間までの鉄道建設も進んだ。同県七戸町に、大量の軍需物資を供給して「神風鉱山」と称された当時国内最大の銅山、上北鉱山もあった。
募集・徴用で各地から労働者が集められたが、長引く戦争で働き手が不足する中、上北鉱山では半数が朝鮮人だったとも言われる。
村上さんは仲間と下北地区を訪ね歩いて話を聞くうちに、労働者の過酷な実態が浮かんできた。
「タコ部屋」と呼ばれる宿舎で監視されて暮らしていた▽「棒頭」と呼ばれる監視係がこん棒で作業員を殴っていた▽逃亡者がリンチを受けていた――。特に朝鮮人は危険な仕事をさせられたという証言もあった。
一方で、逃走に手を貸した人も少なくなかった。「捕まれば殺される、という若い男を祭りの日まで10日ほどかくまい、人混みに紛れ込ませて逃がした」「助けを求めた朝鮮人労働者を母が連れて帰り、漁師の格好をさせて舟に乗せた」――。
村上さんは「助けた方も命懸けだったはず。自分なら、と身につまされた」と話した。
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現場を、村上さんに案内してもらった。
海上自衛隊の送信所になっている「樺山飛行場」。韓国の市民団体が90年代に実施した調査で、21歳のとき連行されこの工事に携わった浮島丸生存者の男性は「冬はあまりの寒さに寝られないほど。負傷者が多かったが、よほどのけがでないと治療してもらえなかった」と答えている。
旧大畑駅の近くには頑丈なコンクリート製のアーチ型の橋がそびえ、海沿いには橋脚の土台やトンネルも残る。43年に工事が中断された「大間鉄道」の建設跡で、近くの男性(72)は「親や近所の人から、昔はタコと呼ばれた労働者がいたと聞いた。子どもの頃にトンネルで遊んだが、冬は氷柱がいっぱい。ここは北海道より寒い」と振り返った。
夜景スポットになっている釜臥(かまふせ)山展望台付近には終戦直前、軍隊3年分の食料や弾薬を保管できるトンネルが掘られ、ここでも多くの朝鮮人が従事した。
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浮島丸の生存者や犠牲者遺族らは、国に約28億円の賠償や公式謝罪などを求めて提訴。1審の京都地裁は安全配慮義務違反を認め国に賠償を命じたが、2審は一転して国の責任を認めず、最高裁が2004年に上告を棄却して判決が確定した。
犠牲者の遺骨280柱は今も東京・祐天寺に安置され、遺族らに返還されていない。
村上さんらは遺骨返還や真相究明を求め、「まずはここで朝鮮人の強制労働があったことを知ってほしい。戦争を繰り返さないためにも」と話す。
下北の会は今年も出港日に合わせ、22日に追悼集会を開く。【上東麻子】
◇浮島丸爆沈を巡る議論
乗船者数や死者数は政府発表を大きく上回るのではないかとの見方がある。政府は昨年、ジャーナリストの布施祐仁さんの情報公開請求に対して「乗船者名簿」の一部を初めて開示。新たな資料の存在が明らかになった。その後政府は、名簿など関連資料を韓国へ提供した。さらに、沈没の原因▽なぜ海軍がこの時期に船を出したか▽舞鶴寄港の理由――などが今も解明されていないとの指摘もある。
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