「祖父の人格を毀損」 NHKの戦後80年ドラマに遺族が抗議

2025/08/26 20:58 

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 NHKが戦後80年に関連し、16、17日に前後編で放送したNHKスペシャル「シミュレーション ~昭和16年夏の敗戦~」を巡り、戦時中に実在し、番組の舞台となった「総力戦研究所」の所長の孫である元駐仏大使の飯村豊さんが26日、東京都内で抗議の記者会見を開いた。「祖父の人格を毀損(きそん)するような描き方をされた」と述べ、放送倫理・番組向上機構(BPO)に申し立てる意向を示した。

 番組は、日米開戦の直前に実際に設立された首相直属機関「総力戦研究所」が舞台。研究所は、日本が米国と戦争した場合の予測を行い、日本が必敗すると報告した。番組はこの史実に着想を得て、ドラマとドキュメンタリーの構成で作られた。

 豊さんは、初代研究所長だった飯村穣・元陸軍中将の孫。ドラマの所長は研究所内の自由な議論を阻む存在だが、豊さんは、資料などから穣さんは自由な議論を奨励したと説明。番組では「所長および関係者はフィクションとして描かれている」とのテロップを入れるなどしたが、豊さんは「間違った伝え方をするのは遺憾。テロップを入れても、視聴者にはドラマが真実と伝わる」と話した。ドラマの映画化の話もあるとして「歴史の歪曲(わいきょく)が恒久化される」と反対した。

 ドラマの脚本・編集・演出は映画監督の石井裕也さんが務めた。NHKは取材に「豊さんとは誠意を持って意見交換した」と説明。「番組内の所長及び関係者はフィクション」とコメントした。【諸隈美紗稀】

毎日新聞

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