「投票すれば報酬」約束か 公選法違反容疑でパチンコ会社社長ら逮捕

2025/08/26 21:40 

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 7月の参院選に自民党の公認候補として比例代表に立候補した阿部恭久氏(66)に投票する見返りに従業員に現金を支払う約束をしたとして、警視庁などの合同捜査本部は26日、パチンコ店を経営する「デルパラ」(東京都港区)社長、山本昌範(本名・李昌範)容疑者(50)=同区六本木3、韓国籍=と幹部社員5人を公職選挙法違反(買収約束)の疑いで逮捕した。

 阿部氏はパチンコ店の全国団体「全日本遊技事業協同組合連合会」の理事長で、業界が今回の参院選で初めて擁立した組織内候補だった。8万8368票を獲得したが、自民の比例候補31人中20位で落選した。

 他に逮捕されたのは同社営業本部長の湯浅一行(46)と管理本部長の小西悌之(ともゆき)(44)の両容疑者ら。

 逮捕容疑は、阿部氏の選挙運動員として全国のグループ傘下の店長と共謀し、7月上旬ごろから中旬ごろにかけて、店舗に勤める従業員やアルバイトら60人に対し、阿部氏に投票することへの報酬として現金3000~4000円を支払う約束をしたとしている。6人の認否は明らかにしていない。

 捜査本部によると、阿部氏に投票する見返りに報酬を約束した従業員らは250人以上に上るといい、平成以降での国政選挙の摘発人数は過去最大になるとみられる。

 湯浅、小西両容疑者は7月2、3日、オンライン会議で各店長に対し、候補者名を記載した投票用紙を撮影するよう指示。写真は無料通信アプリ「LINE(ライン)」などで店長に送らせ、本社に報告していたという。警察当局が捜査に着手したため、実際に報酬が支払われた形跡は確認されていないという。

 デルパラのホームページによると、同社のグループは東京、茨城、神奈川、埼玉、岡山、鳥取、山口、鹿児島の8都県で計31店舗を展開。グループの従業員数は約540人とされる。

 信用調査会社などによると、デルパラは2023年4月に鳥取県米子市から東京都港区に移転。今年1月、鹿児島市内にあるパチンコ店の経営会社を子会社化するなど、店舗を拡大してきた。

 パチンコ業界全体が経営不振にあえぐ中、デルパラは人気機種の導入などによる集客力を維持。24年7月期の決算で売上高は約694億円、最終(当期)利益は約5億円を計上していた。【山本康介、長屋美乃里】

毎日新聞

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