美川憲一さん公表「洞不全症候群」 めまいに失神…どんな病気?

2025/09/19 11:33 

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 歌手の美川憲一さん(79)が「洞不全症候群」を発症し、手術を受けたことを報告した。どのような病気なのだろうか。

 洞不全症候群は、心臓の右心房にあり電気信号を発して脈拍をつかさどる「洞結節」の機能が低下し、脈が極端に遅くなったり、一時的に止まってしまう病気だ。脳に血液が行き届かなくなり、めまいやふらつき、失神などの症状が表れる。

 「めまいにはいろいろなタイプがある。目の前が真っ暗になったり、気が遠くなったりする場合は、心臓の疾患が疑われる」。東京ハートリズムクリニック羽田の副院長で循環器専門医の長堀亘さんは解説する。「場合によっては息切れやむくみ、易疲労感などの心不全症状が表れる。気を失ってから心臓が動き出したときにけいれんを起こすことも」

 原因不明の「特発性」がほとんどを占めるという。「加齢とともに洞結節の機能が低下して発症することが多く、70~80代に多く見られる。老化によるもののため、予防をするのも難しい」と語る。

 発症が疑われる場合はまず検査をする。小型の心電計を装着し、胸に電極シールを貼った状態で、日常生活を送りながら長時間心電図を記録する「ホルター心電図」が一般的だ。

 検査の結果、洞不全症候群と認められた場合には、ペースメーカーを使用する。心臓までつながるリード線と、電池と電気回路が内蔵された小さな機械で、左右どちらかの胸の皮下に埋め込むための手術が必要となる。最近は心臓内に本体を留置するリードレスペースメーカーも選択できる。「どちらが良いかはそれぞれの利点欠点をよく理解して主治医と決めてほしい」

 長堀副院長によると、薬物療法を希望する患者もいるが、心拍を増やすための薬はわずかしかなく、確実な治療につながるものがない。このためペースメーカーでの治療が一般的だ。手術は1~2時間程度で終わり、数日から1週間程度で退院できる。

 ペースメーカーは洞結節の代わりとなり、心臓が正常に動くようになる。日常生活を送る上で気をつけることはあるのか。

 長堀副院長によると、ペースメーカーが入っている部分は『異物が入っている』状態のため、感染などが起きる可能性もある。そのため、傷口を清潔に保つ必要がある。また、10年に1回程度、本体交換のための手術が必要になる。

 ペースメーカーを誤作動させる可能性があるとして、電車内などで「携帯電話電源オフ」が呼びかけられているが、実際に影響はあるのか。長堀副院長は「現在は携帯電話の基地局が増えたことで電波の出力が以前より弱くなっており、あまり心配はいらない。ただ、左胸のポケットに携帯電話を入れるなどペースメーカーの近くに置くことは避けてほしい」と話す。【井出礼子】

毎日新聞

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