原付きツーリングのはずが… 変わる「令和の暴走族」の実態
減少を続けていた暴走族が、形を変えて再び増加の兆しを見せている。
かつて不良漫画の舞台にもなった神奈川県では、ここ5年で構成員が倍増した。加入のハードルが低くなり、暴走族と知らないまま参加しているケースもあるという。
何気ないきっかけで事件に巻き込まれた少年の体験から、「令和の暴走族」の実態に迫った。
◇「ツーリング感覚」で参加
何台ものバイクの爆音が響く、神奈川県内の幹線道路。昔のような大型の改造車ではなくスクーターだが、乗っているのは県警が暴走族として取り締まりの対象とする少年たちだ。
県内の少年(17)は、16歳になった時に原付き免許を取得した。
学校や仕事終わりの地元の友達と一緒に、近くの峠を原付きで走り、山中の駐車場でたわいもない会話をして戻ってくる。そんな日常だった。
暴走や犯罪行為はせず、あくまでも「ツーリング」の感覚で楽しんでいたという。
2024年9月、駐車場で居合わせた先輩から「バイクで走っているならグループに入った方がいい」と言われ、一方的にLINE(ライン)のグループチャットに参加させられた。
後で分かったが、この先輩は暴走族のリーダーだった。
◇「殺されるかもしれない」
「話し合いするから全員集まって」。11月、このリーダーからメッセージが届いた。別のチームと会って話をするのだという。
少年は言われるがままに、グループの数人で河川敷へ向かった。「よく分からなかったけど、先輩の言うことだから断れなかった」
夜中に真っ暗な河川敷に着くと、相手チームの約20人に囲まれた。理由も分からないまま、河原に置かれていたパイプ椅子などで全身を殴られた。
何度も蹴られ、顔も踏みつけられた。「殺されるかもしれない」。20分もの間、必死にうずくまり、暴行が終わるのを待った。
誰かが通報したのか、パトカーの赤色灯が近づいてきた。少年のけがは全治約2週間。相手は全員逃げたが、後に傷害容疑で4人が書類送検された。
暴行された理由は、グループのリーダーが相手チームに因縁をつけたということだった。無関係の少年も「グループのメンバー」として報復を受けた形だ。
◇PTSDで今も通院
実は少年のグループは県警に暴走族と認定されており、自身も事件によって「構成員」と判断された。
事件後は恐怖で家から出られなくなり、勤めていた建設会社も辞めた。顔や体の傷は治ったが、フラッシュバックに悩まされている。
「地元が同じなので、どこで誰に会うのかわからない。バイクのエンジンを吹かす音が聞こえてくると怖い」
寝ていても、暴行された場面が夢に出てきてうなされる。心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断され、今も通院を続けている。
少年の父親(54)は「加害者たちは謝罪もしてこない。息子の元の生活を返してほしい」と憤る。
加害者側のチームは相次いで暴行事件を起こしていたとみられ、父親は「警察は厳しく取り締まってほしい」と訴える。
◇増加に転じた構成員数
現代の暴走族は、かつてのように派手な「特攻服」ではなく、多くがラフなTシャツや短パン姿でスクーターを乗り回す。
神奈川県警によると、交流サイト(SNS)などを使い、バイクに乗る若者に暴走族が声をかけて勧誘する手法は増えている。少年のように、暴走族と知らないまま事件に巻き込まれる例も目立つという。
暴走族の構成員は、ピークの1980年代は全国で4万人以上が確認されていた。
その後は、取り締まりの強化や少子化の影響で減少。新型コロナ禍もあって2020年に過去最少の5714人となったが、24年は5880人に微増した。
神奈川に限ると、同期間で540人から1031人と約2倍に急増。県警は横浜、川崎、相模原の各政令市を中心に約20グループの活動を把握している。
◇トクリュウの供給源に?
神奈川は以前から暴走族が多い地域として知られ、横浜や湘南地域は不良少年たちを描いた漫画の舞台にもなってきた。
県警は「暴走族といえば神奈川というイメージを少年たちが共有しているのに加え、集団で走りやすい工業地帯や臨海部の幹線道路がたくさんあるため、構成員が多いのではないか」と分析する。
さらに、新型コロナ禍が収束して外出の機会が増えたことも、増加と関連している可能性があるという。
近年は暴走族が「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」の人的供給源になっている可能性もあり、捜査当局は警戒を強めている。
県警暴走族対策室は「チーム名を隠す場合も多く、昔と比べて潜在化している。誘われても入らず、困ったら警察に相談してほしい」と呼びかけている。【横見知佳】
-
世界文化遺産候補「飛鳥・藤原」 奈良県民でも「知らない」2割
2026年7月にも奈良県内4件目の登録が期待される世界文化遺産候補「飛鳥・藤原の宮都(飛鳥・藤原)」(明日香村、橿原、桜井両市)について奈良県が8月、認知度ア…社 会 1時間前 毎日新聞
-
世田谷女性殺害、ストーカー疑いで再逮捕へ 前日にマンション侵入か
東京都世田谷区で1日に韓国籍の女性が殺害された事件で、警視庁は、女性にストーカー行為をしていた疑いが強まったとして、交際相手で住所・職業不詳、パク・ヨンジュン…社 会 8時間前 毎日新聞
-
バスと衝突しオートバイの男性死亡 神奈川中央交通7月にも死亡事故
21日午後4時40分ごろ、神奈川県大磯町高麗2の国道で、オートバイを運転していた無職の男性(34)=小田原市酒匂4=が路線バスと衝突して頭を強く打ち、搬送先の…社 会 13時間前 毎日新聞
-
北海道初の線状降水帯、コンブ漁作業小屋の全壊など被害広がる
前線を伴った発達した低気圧の影響で、北海道内では20日夜から21日にかけて各地で大雨となり、釧路地方と十勝地方では21日未明に線状降水帯が発生した。札幌管区気…社 会 14時間前 毎日新聞
-
天皇ご一家が世界陸上を観戦 雨降る中での接戦に拍手送る
天皇、皇后両陛下と長女愛子さまは21日夜、東京・国立競技場で、陸上の世界選手権東京大会を観戦された。この日は大会の最終日でリレー決勝などがあった。ご一家は貴賓…社 会 15時間前 毎日新聞