米軍岩国基地の離着陸訓練、騒音苦情が1000件超 反発強まる

2025/09/26 21:22 

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 在日米海軍は、米軍岩国基地(山口県岩国市)での空母艦載機による陸上離着陸訓練(FCLP)を、予定より1日早く25日で終了した。岩国基地で2000年以来25年ぶりとなったFCLPは地元の中止要請にもかかわらず17日から強行され、市に寄せられた住民らの騒音などの苦情は1000件を超えた。通告外の時間や祝日の訓練も確認。周辺自治体では反発が高まっている。

 FCLP終了は米軍が26日、防衛省を通じ山口県や岩国市へ通知した。市によると、訓練は通告外だった祝日の23日を含め7日間実施され、うち6日間で通告時間帯の超過があった。

 市が目視確認した実施時間は、職員を配置しなかった23日を除く6日間で約36時間20分に及び、滑走路に降下し急上昇する「タッチ・アンド・ゴー」は592回確認した。

 市が基地滑走路近くの北側と南側に設置した測定点では、70デシベル以上が5秒以上続く騒音が北側で計1431回、南側で計1541回に上った。この回数は24年度の年間騒音回数の約2割に当たる。騒音の最大値は24日午後8時15分に南側で「電車のガード下並み」の101・1デシベルを記録した。

 実施7日間に市に寄せられた苦情は1111件。大半の1064件が騒音関連で、「60年以上我慢してきたが、あまりにもひどい」「声が聞こえず会話が途切れる」「窓も開けられない」「耐えられないのでやめてほしい」「夜勤なのに眠れない」「子供が寝る時間なのに騒音が続いている」「お年寄りが休めない」などと訴えがあった。

 岩国市の福田良彦市長は26日、周辺自治体の首長らと防衛省を訪れ中谷元・防衛相らと面談した。訓練が強行され、通告時間外にも実施されたことなどに強く抗議し、「岩国基地で二度とFCLPが実施されることがないよう米側に強く要請すること」を求めた。中谷氏は騒音を「大変重く受け止めている」としつつ、FCLPが「わが国の防衛や地域における米国の抑止力、対処力の強化のため非常に意義がある」と、従来の見解を繰り返した。

 今回のFCLPは、米軍が訓練場所としている硫黄島(東京)の噴火活動を理由に、岩国基地で実施された。防衛省によると、噴火に伴い航空基地に燃料を供給するパイプラインなどの施設が被害を受けており、今後、復旧に取り組む。ただ、引き続き硫黄島が使用できない場合の訓練場所は「米軍側が判断することになる」とし、岩国基地での訓練固定化を懸念する地元の不安は残されている。

 基地周辺の自治体では、FCLPが実施されないよう求める意見書を山口県周防大島町議会が可決し、岩国市議会なども同様の意見書を可決。県議会では自民会派が提出する見通しだ。市議会で25日に意見書を提案した保守系議員は「国はアメリカのいいなり。防衛相も外相も米軍のメッセンジャー。約束した時間は守られないし、やりたい放題だ。我々の我慢にも限界がある」と訴えた。【大山典男、宮城裕也】

毎日新聞

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