長射程ミサイルの熊本配備 市民向け窓口をHPにひっそり掲載

2025/10/09 19:12 

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 有事の際の「反撃能力」(敵基地攻撃能力)となる長射程ミサイルを熊本市東区の陸上自衛隊健軍駐屯地に配備する計画を巡り、市民からの質問に答える問い合わせ窓口の周知のあり方に疑問の声が出ている。大西一史市長の要望を受け、防衛省九州防衛局が9月に設置したが、防衛局のホームページ(HP)にひっそりと掲載しているだけで、HP上の目立つところに設置の案内もない。

 長射程ミサイルの配備には「有事に敵の標的になるのではないか」などといった不安も住民にはある。市民からは「窓口を広く周知しようという姿勢が見えない」といった声が上がる。

 防衛省は8月29日、地上発射型の国産ミサイル「12式地対艦誘導弾」を改良した「能力向上型」を2025年度末に健軍駐屯地へ配備する計画を発表。九州防衛局の伊藤和己局長が同日、熊本県庁と熊本市役所を訪れ、木村敬知事と大西市長に計画の内容を伝えた。木村知事と大西市長は「住民への丁寧な説明」を求めるとともに、大西市長は相談窓口設置も要望した。

 これを受け、九州防衛局は9月1日、「健軍駐屯地におけるスタンド・オフ・ミサイル配備について Q&A」と題した資料をHPに掲載。資料はPDFファイル5ページで、5ページ目の最後に問い合わせ窓口として、同局総務部報道官の電話番号とメールアドレスを載せた。

 しかし、HPのトップページには「新着情報」の欄に「『陸上自衛隊健軍駐屯地への12式地対艦誘導弾能力向上型(地発型)の配備について』を更新しました」とあるだけで、窓口設置についての案内はない。九州防衛局によると、10月8日昼までに届いた問い合わせは、電話とメールで「計10件未満」だという。

 市によると、9月1日に市危機管理課宛てのメールが九州防衛局から届き、問い合わせ窓口を設置した旨が記載されていた。同課の担当者は「トップページから『健軍』などと検索すれば資料が出てくる。見つけにくいという印象はない」と話すが、健軍駐屯地がある熊本市東区の男性会社員(39)は「検索をすればすぐに見つかるかもしれないが、より広く周知しようという意図は感じられない」と疑問を呈する。

 駐屯地近くの商店街にいた熊本市中央区の主婦(51)も「もう少し情報を出したり、疑問に答えたりするような姿勢があってもいいのでは」と話した。

 駐屯地近くの住民らでつくる「平和が一番!東区の会」の代表を務める東海大名誉教授の山下雅彦さん(71)は「窓口が設置されていたことは知らなかった」とし、「突如出た長射程ミサイル配備の話に我々も驚き、関心が高まっている。情報公開が求められる時代なのに、市民からの疑問に答え、不安を払拭(ふっしょく)するための窓口とは言えない」と語る。九州防衛局は「現時点で掲載方法を見直す予定はない」としている。【野呂賢治】

毎日新聞

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