「一人も取り残さない」 指定宗教法人の清算指針を策定 文化庁

2025/10/20 14:57 

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 文化庁は20日、財産監視の対象となる「指定宗教法人」の清算に際して、献金被害回復の方法や清算人の権限を盛り込んだ指針を策定した。宗教法人法には解散した法人の清算方法が具体的に明記されておらず、指針は清算人に参考としてもらう狙いがある。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の被害者救済を念頭に、清算が長期に及ぶ場合は清算人に「一人の被害者も取り残さない」ことを求めた。

 指定宗教法人とは、法令違反などにより解散命令を請求され、被害者が多数存在する宗教法人を所轄庁が指定する仕組み。旧統一教会による多額の献金問題を背景に2023年12月に施行された被害者救済の特例法で定められた。解散命令前の財産移転を防ぐ目的で、不動産を処分する際に国などへの通知を義務づけている。

 旧統一教会は24年3月に当時の盛山正仁文部科学相により指定宗教法人に指定された。解散を命じた25年3月の東京地裁決定を不服として東京高裁に即時抗告しているが、高裁が決定を支持すれば、最高裁の判断を待たずに解散命令の効力が生じ、地裁が選任する清算人による手続きが始まる見込みだ。

 宗教法人法に基づき、解散により法人の代表役員は退任となり、清算人は法人の代表者として財産の管理・処分を担う。被害者の申し立てを催告し、被害の弁償に財産が足りないことが判明した場合はただちに破産手続きを取ると定められている。

 ただ、宗教法人法は清算人の具体的な業務内容を規定していない。「一般的な会社清算のやり方や期間では、多数の被害者全てを救済できない恐れがあった」(文化庁の担当者)ため、5月に有識者の検討会議を発足させて指針策定に乗り出した。

 指針は清算人の権限などが明記され、法的拘束力はない。指定宗教法人の清算開始から完了までは長期にわたると想定し、「一人も取り残すことのないよう誠実に対応する」ことを求めた。

 弁済を進める具体例として、寄付記録などから元信者らに被害申し出の意思があるか個別に確認することや、相談窓口の設置、説明会の開催などを挙げた。

 一方、法人関係者が財産を隠匿して損害が生じた場合などは、民事上の責任を問うことも考えられるとした。さらに以前の役員に対し、「(法人が)解散に至った運営の責任」を問う可能性にも踏み込んだ。

 旧統一教会は指針に対してホームページで「清算人が潜在的債権者を掘り出すことを前提にしており、権限の逸脱とも言える。信徒情報の不当な利用を正当化する危険な仕組みである」などと抗議している。【西本紗保美】

毎日新聞

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