白髪が増えるのは、がん防ぐ防御反応? 東大など発表「老化に意味」

2025/10/20 20:24 

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 白髪が増えるのは、損傷を受けた細胞を自ら排除する仕組みが働いているためで、がんを防ぐための防御反応にもなり得るとの研究結果を、東京大医科学研究所の西村栄美(えみ)教授(幹細胞生物学)らのチームがつきとめ、英科学誌「ネイチャー・セル・バイオロジー」電子版に発表した。皮膚がんの一種「悪性黒色腫(メラノーマ)」の発生メカニズムに関わる重要な成果という。

 白髪は、毛包の中にある髪の毛の色を決める細胞の元となる「色素幹細胞」が、加齢により枯渇して起きる代表的な老化現象。

 実験では、放射線で人為的に皮膚を老化させたマウスには、白髪が生じた。損傷を受けた色素幹細胞が枯渇し、毛包から排除されたためだという。

 一方で、紫外線など発がん物質を投与したマウスは、色素幹細胞を活性化する物質が毛包内で生成され、老化が抑制された。細胞の複製が促進されることで、損傷を受けた細胞が排除されず毛包内にとどまり続けるため、白髪にならなかった。その後、損傷のある細胞はメラノーマに変化した。

 こうした結果から、チームは、白髪はがんのリスクがある細胞を排除する現象で、発がん物質はこの仕組みを抑制するため、がんのリスクが急激に高まると結論づけた。

 西村さんは「白髪は意味なく増えるわけではなく、傷を負った細胞が選択的になくなっていく現象だ。細胞がきちんと老化し、排除されることが重要で、安全性や科学的根拠が確立していない施術や外用剤はリスクがある場合があるので注意してほしい」と話した。【垂水友里香】

毎日新聞

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