元NHK会長・海老沢さん死去 政界と太いパイプ、BSや地デジ推進

2025/10/20 20:28 

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 NHK会長を3期7年半にわたり務めた海老沢勝二(えびさわ・かつじ)さんが19日、誤嚥(ごえん)性肺炎のため死去した。91歳。

 1957年に早稲田大卒業後、NHKに入局。政治部長、報道局長、NHKエンタープライズ社長などを経て、94年にNHK副会長になり、97年に会長に就任した。

 多メディア、多チャンネル時代を迎えた中で、政界と太いパイプを持つ「実力派」として、リーダーシップを発揮。2000年末に開始のBS(衛星)デジタル放送や、03年末に開始の地上デジタル(地デジ)放送の他、インターネットを使ったサービスを推進し、「ハイビジョンの伝道師」も自称した。事業の拡大路線を取り、「NHKの肥大化」との批判も受けた。アジア太平洋放送連合(ABU)会長も務め、02年に国際エミー賞の経営者賞を受賞した。

 生え抜きとして初めて3期連続で会長に選ばれたが、04年にチーフプロデューサーによる番組制作費の着服事件が発覚した。他にもカラ出張など職員の不祥事が続き、受信料の不払いが拡大。任期途中の05年1月に引責辞任した。後任会長で生え抜きの橋本元一氏も職員のインサイダー取引の責任を取って08年に辞任。以降、NHKの会長は外部からの登用が続いている。

 海老沢さんが会長在任中の01年には、旧日本軍の従軍慰安婦を扱ったNHKの特集番組「ETV2001シリーズ戦争をどう裁くか 問われる戦時性暴力」の放送直前に、放送総局長らが安倍晋三官房副長官(当時)に番組内容を説明して内容が改変される問題が起き、政治との距離が問われる事態となった。

 会長を退任後は、横綱審議委員会の委員長、読売新聞調査研究本部顧問などを務めた。

毎日新聞

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