「松橋事件」国賠訴訟の控訴審 県と国は争う姿勢 遺族「虚偽自白」

2025/10/20 18:35 

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 1985年に熊本県松橋(まつばせ)町(現宇城市)で男性が殺害された「松橋事件」で服役後に再審無罪が確定し、2020年に87歳で死去した宮田浩喜さんの遺族が、国と県に損害賠償を求めた訴訟の控訴審第1回口頭弁論が20日、福岡高裁(岡田健裁判長)であり、遺族側は国に加え、県の賠償責任も認めるよう求めた。一方、国側は国に約2381万円の賠償を命じた1審判決の取り消しを訴え、県側は遺族側の控訴を棄却するよう求めた。

 確定判決が宮田さんを有罪とした唯一の証拠は「(凶器とされた)小刀にシャツ片を巻き付け、殺害後に燃やした」とする自白だった。だが、弁護団が再審請求準備中、検察側の証拠物から燃やしたはずのシャツ片が見つかり、再審無罪の決め手になった。25年3月の1審・熊本地裁判決は、検察官がシャツ片の存在を明らかにせずに公判を続けたのは違法と認め、国に賠償を命じた。ただ、県警の取り調べの違法性は認めなかった。国と遺族側がそれぞれ控訴していた。

 遺族側は控訴審の意見陳述で「(県警は)虚偽の自白を状況に合致するように変遷させた」と主張。国に命じた賠償を県も連帯して支払うべきだと訴えた。一方、国側は「自白の核心は被害者の首を刺したことだ」と主張。シャツ片の存在は自白の信用性に影響を及ぼさず、1審の判断は誤りだと訴えた。【森永亨】

毎日新聞

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