正倉院展、奈良で開幕 瑠璃坏、信長ゆかりの香木など67件展示

2025/10/24 17:27 

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 奈良市の奈良国立博物館で25日、第77回正倉院展が開幕する。コバルト色が美しいガラス容器「瑠璃坏(るりのつき)」や、織田信長らが一部を切り取ったとされる香木「黄熟香(蘭奢待(らんじゃたい))」など、正倉院に伝わる宝物67件が出品された。うち6件は初公開。11月10日まで。

 瑠璃坏はシルクロードを通じてもたらされた。高さ11・2センチ。コバルトで着色してある。22個の円環が貼り付けてある。貼り付け装飾のある薄手吹きガラスは、ローマン・グラスの流れをくんだもの。産地ははっきりしないが、多くの研究者が西アジア産と考えている。銀製の脚は、東洋風の竜が描かれ、漆で本体と接合されていたことから東アジア製とみられている。

 黄熟香は蘭奢待(らんじゃたい)の名で知られている。長さ1・56メートル、重さ11・6キロ。信長のほか、足利義政と明治天皇が切り取ったことを示す紙箋(しせん)がついている。

 明治天皇が正倉院を訪れた際にたかれた。「薫烟芳芬(くんえんほうぶん)として行宮(あんぐう)に満ちた」との記録がある。「芳芬」は芳しい香りという意味。どんな香りだったのかは長らく話題に上ったが、正倉院事務所の調査で、甘く、スパイシーな香りがする「ラブダナム」に似た成分が含まれていることが分かった。ジンチョウゲ科の幹で、インドシナ半島東部の山岳地帯で産出されたものに近い特徴が見られる。8世紀後半~9世紀末ごろに伐採されたか倒壊した幹のようだ。

 東大寺の大仏開眼法要(752年)で目に瞳を描いた「天平宝物筆」(長さ65・2センチ)も展示されている。

 観覧には日時指定の前売り券を購入する。一般2000円、高大生1500円、小中生500円。枠が空いていれば当日も購入できる。問い合わせは特設ダイヤル(050・5542・8600)。【大川泰弘】

毎日新聞

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