アドトラック「国レベルでもルール作りを」 衆院議員が規制検討提起

2025/11/01 08:45 

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 大型広告を表示して繁華街を走るアドトラック(広告宣伝車)について、れいわ新選組の八幡愛衆院議員が政府に質問主意書を提出し、規制のあり方について問題提起した。アドトラックを巡っては風俗求人サイトなどの広告に「うるさい」「不健全だ」などの苦情が相次ぎ、福岡市では条例改正による規制強化が検討されている。八幡議員は取材に「公共空間の表現ルールについて国レベルでの議論が必要だ」と述べた。八幡議員の話は次の通り。【聞き手・平川昌範】

 ――質問主意書を出したきっかけは?

 ◆風俗求人のアドトラックの音楽を小学生が口ずさむ状況に疑問を覚えていました。見たくなくても見えてしまう現状には「ゾーニング」の問題があり、見せる場所や時間、方法について制限が必要ではないかという問題意識があります。

 ――質問主意書では表現の自由を尊重しつつ、慎重かつ合理的な規制の在り方を検討するとしています。

 ◆私自身は「表現の自由」は守るべきだというスタンスです。地元の大阪でもセクシーなイラストの広告が問題になったこともあります。広告を出す場所次第では批判が集まるのもやむを得ない面があります。

 こうした議論はどうしても禁止するか野放しのままかという二元論になり、細かい議論は避けられがちです。一律に禁止するのは早くて簡単ですが、さまざまな制約が生じる恐れがあります。学校のそばを走らないなど音量や走行ルートなどについて細かいガイドラインが必要だと思います。

 ――今後どのような検討が必要でしょうか。

 ◆私はAV出演被害防止・救済法の問題にも関わってきましたが、現場の声を聞くことは重要です。今回の質問主意書を出すに当たって風俗業界で働く人に話を聞きました。アドトラックは「やり過ぎ」と思うこともあり、規制の流れに違和感はないとのことでした。

 風俗業界そのものを否定することなく、その上で公共空間でのルールを守ることは両立可能だと考えます。自治体レベルで条例による規制が検討されていますが、国レベルでも議論が必要です。法的な枠組みを整理して政府の姿勢を探っていきたいと思います。

 八幡愛衆院議員によるアドトラックに関する質問主意書(10月24日付)の要旨は次の通り。

 近年、繁華街などを中心に風俗業の求人サイトなどを宣伝する広告宣伝車(いわゆるアドトラック)が、昼夜を問わず走行している事例が全国で確認されている。派手な装飾や大音量の音楽を伴うものも多く、地域住民や観光客からの苦情が相次いでいる。特に通学路や駅前を通過する際、未成年者が性的内容を含む広告表現にさらされるとの指摘もあり、健全な社会環境の維持の観点から懸念が高まっている。

 憲法が保障する表現の自由は民主主義社会における基本的人権の根幹で、国家による規制は慎重に行われるべきで、広告・宣伝活動においても表現の自由の保障の下に営まれるべきだ。

 しかしながら、現行法制度上、風俗業の求人広告に関する屋外広告物規制が極めて限定的で、走行中の車両広告に対しては屋外広告物法や風営法の直接的な適用が及びにくい。騒音規制や道路使用許可制度も、広告目的での音声拡散やルート選定について実効的な抑制を行う仕組みが十分に整っていない。

 アドトラック事業の関係者に取材した報道によれば、こうしたアドトラックによる事業は求人サイトの知名度向上に著しい効果をもたらす一方、運営者自身が「青少年に悪影響を及ぼす」「社会的に健全ではない」として後悔を表明する事例も報告されている。

 以上を踏まえ、表現の自由を最大限に尊重しつつも、公共空間における適切なバランスの確保と青少年保護の観点から、慎重かつ合理的な規制の在り方を検討するため、政府に質問する。

       <主な質問内容>

・風俗業の求人広告を掲げたアドトラックの走行実態はどうなっているか。また、関連規定の法的整理について政府の見解は?

・青少年の健全育成の観点から昼間や通学時間帯に風俗求人広告を含むアドトラックが走行することを是認できると考えているか

・公共空間における性的表現や求人広告の露出について社会的影響を踏まえた「時・場所・方法(TPM)」規制を導入する必要性について政府はどのように考えるか

毎日新聞

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