クマ被害で紅葉狩りも「厳戒」 人気観光地も閑散、旅館キャンセルも

2025/11/07 16:14 

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 クマによる人的被害が深刻化し、各地でイベントの中止や変更が相次いでいる。幅広い行事に影響が広がり、紅葉シーズンを迎えた観光地も「厳戒態勢」で対策を進めている。

 「クマの目撃情報がこんなに届くことは過去になく、一段と危機感を強めている」。鳴子温泉郷観光協会(宮城県大崎市)の担当者は、そう語る。

 地元の「鳴子峡」は紅葉スポットとして知られ、今が一番の書き入れ時。だが今年はクマの目撃が相次ぎ、市は初めて「クマ出没緊急事態宣言」を発表した。観光客も例年より少なく、旅館ではキャンセルも出ているという。

 協会の担当者は「1人で歩かないなどの対策を伝え、『十分注意してください』と呼びかけるしかできない。『本当に大丈夫か』と聞かれるのが非常に困る」と打ち明ける。県警もパトカーを配置し、スピーカーを使って英語や中国語など4カ国語でクマへの注意を放送しているという。

 紅葉が見ごろを迎えている福島県の裏磐梯でも、観光客からの問い合わせが相次いでいる。北塩原村は交流サイト(SNS)で注意を呼びかけているほか、クマ鈴を貸し出し、対策をまとめたパンフレットも配布。日本語と英語で注意を呼びかける看板を立て、パンフレットの多言語化も検討している。

 今年度のクマによる人身被害が54件(6日現在)に上る秋田県では、捕獲の支援に自衛隊が投入された。

 秋田市の中心部にあり豊かな自然が人気の「千秋公園」も、今年は閑散としている。クマの目撃情報が相次ぎ、市は10月26日から立ち入りを規制した。

 園内に仕掛けた箱わなで2頭が捕獲され、11月4日午前10時過ぎに規制をいったん解除。だが正午ごろにまた目撃情報が入ったため、その日の午後に再び封鎖するなど、クマに翻弄(ほんろう)されている状況だ。

 世界文化遺産の合掌造り集落で知られる白川郷(岐阜県白川村)の周辺施設では、10月下旬から予定されていた紅葉のライトアップが中止になった。【木原真希、松浦吉剛、寺町六花】

毎日新聞

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