50代独身女性、移住で気づいた縁 中江有里さん主演「道草キッチン」

2025/11/07 16:57 

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 俳優の中江有里さんが主演を務め、徳島県内で撮影された映画「道草キッチン」(96分)の上映が7日、県内の2映画館で始まった。ゆったりと流れる吉野川に架かる潜水橋など、徳島らしい魅力がある場面も盛りだくさんの中、主人公が人とのつながりに気付いていくストーリー。同日、中江さんや脚本も手がけた白羽弥仁監督が県庁(徳島市)で記者会見を開きPRした。

 映画は家族や親族がおらず都会で小さな喫茶店を営む、中江さん演じる50代独身の桂木立(りつ)が主人公。余生を一人で生きていこうと決めていたが、再開発によって立ち退きを余儀なくされ、閉店となる。将来への不安を抱え、ぼうぜんとするが、同県吉野川市から相続に関する通知が届いたことをきっかけに徳島への移住を決める。いろいろな事情を抱えた地元住民のほか、懸命に生きるベトナム人たち、そしてベトナム料理を通じ、自身の過去に対するわだかまりに向き合い、生き方を見つめ直す、という物語だ。原作はなく、白羽監督が吉野川市などに入って、ベトナム人を含む地元で暮らす人々と交流する中で脚本を作ったという。

 撮影は2024年10月、吉野川市や板野町で行われた。04年に合併で誕生した吉野川市は「市制20周年」の、1955年の合併で発足した板野町は「町制70周年」の記念事業と位置付けている。そして、吉野川市は2000万円を、板野町は1000万円をそれぞれ24年度に支出し、特別協賛している。

 両市町では12月21日まで、ロケ地を巡るスタンプラリーも実施しており、全国公開されることによる両市町内の見どころPRとあわせ、映画ファンらが足を運ぶことも期待している。

 11月7日の記者会見で、白羽監督は「たくさんの人に見てもらい、世界にも発信したい」などと話した。また、中江さんは「縁あって徳島に移住し、そこで縁をつないでいく。一人でも生きていけるけど、いろんな人とつながっていることが人生の豊かさにつながっていく。そういう作品です」などと主人公の気持ちを紹介した。

 8日には白羽監督と中江さんが徳島県内の2映画館で舞台あいさつに立つ予定。徳島市のイオンシネマ徳島では、午前10時半開演の上映後、同県北島町のシネマサンシャイン北島では、午後1時5分開演の上映後となる。

 「道草キッチン」は今後、関西や関東、愛知県など各地で上映される予定。【植松晃一】

毎日新聞

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