岩手・大槌町役場跡に石碑建立、除幕式 遺族「震災を自分ごとに」
2011年の東日本大震災で犠牲になった岩手県大槌町職員の遺族団体が建立した石碑の除幕式が7日、碑が設置された町役場跡地であった。犠牲者40人の名前を刻まない代わりに、震災直後の町の対応の不備を記す伝承碑とした。町に協力を要望して3年近く経過しての建立に、遺族側は「時間はかかったが震災を伝えるきっかけになれば」と願った。
式典には「東日本大震災津波大槌町役場犠牲職員遺族有志の会」のほか、平野公三町長ら町関係者、建立に協力した現役の町職員ら約50人が参列した。
会の代表で長女裕香さん(当時26歳)を亡くした小笠原人志さん(73)が「(要望から)3年近くたってやっと建立できた。碑に接した人が震災を自分ごととして考えてもらえれば」とあいさつ。夫の正志さん(同52歳)が犠牲になった前川寿子さん(67)は「碑の内容は当初の思いと変わったが、建てられてよかった」と語った。
遺族の支援に携わってきた麦倉哲・岩手大名誉教授(災害社会学)は取材に「震災伝承の形はさまざまだが、碑は町全体で震災を語り継ぐ取り組みにつながると思う」と話した。平野町長は「建立への反対意見もあったが碑は震災の教訓を学ぶ礎になる」と述べた。
石碑は縦90センチ、横180センチで、費用は遺族と現役職員らの寄付でまかなった。震災直後に低地にあった役場前に災害対策本部が設置され当時の町長らが津波にのまれた他、町外から役場に戻ろうとした職員が被災したことを「事前に定めた災害対策に則しておらず、多くの犠牲者を生んだ要因の一つ」と刻んだ。
遺族側は役場跡地に慰霊碑を建てようと2023年3月、町に用地の貸与を要望。町は同年末「跡地は震災伝承の場と位置付けており、慰霊碑はなじまない」と拒否し、現在の役場内を提案した。
遺族側は、町の震災対応の不備を伝えるため設置場所は譲らない代わりに、犠牲者名を刻銘しない伝承碑とする方針に転換。町も役場跡地への建立を認め、25年11月に合意した。【奥田伸一】
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