国会図書館の書誌電子化の一端担う 大阪の障害者就労支援事業所
国内で発行される本、雑誌、新聞などすべての出版物が収蔵される国立国会図書館。2024年度時点での収蔵点数は4811万3609点に上る。国会図書館は利便性の向上や資料の保存などを目的に書誌の電子化を進めている。デジタルサービスセンター大阪(DSC大阪、大阪府茨木市)はその「知のインフラ」作りを担う障害者就労支援事業所だ。
◇確認は徹底的に
DSCは、精神障害などを抱える利用者が就職して働き続けられるよう、訓練や支援を提供する。電子化作業は、20~60代の障害のある男女5人が支援者や非常勤スタッフらと取り組んでいる。
115平方メートルの作業室には、複数の布製の簡易暗室が設置され、高性能スキャナーが9台とデスクトップパソコンが並ぶ。A2やA3サイズにも対応し、非接触タイプの高性能なスキャナーを使い、利用者が書誌の見開き1ページごとを読み取っていく。
スキャン前には書誌に汚れがないかを徹底的に確認する。スキャン時もサイズや位置、色の基準に適合しているかなどに配慮しながら作業を進め、スキャン後は読み込んだ画像を1コマずつ検査。汚れやずれがあれば、やり直す。
今年度は100万ページ相当をデータ化する予定だ。3回に分けて届く書誌は4167冊に上る。
◇当初は苦戦したが
DSCは24年度まで飲料水宅配などの全く異なる事業を行っていたが、収益環境の変化に伴い、25年度から日本財団が国会図書館から受注した蔵書デジタル化事業の一部を担うことになった。
事業内容の大転換で、当初は作業が計画通りに進まず、目標の6~7割にとどまることもあった。それでも、財団や運営法人の職員らと協力し、10月ごろには安定して高い品質のスキャンを行えるようになったという。
DSC大阪の柿原晋裕所長(46)は「デジタル化で自分の仕事が後世に残る形で社会に貢献できる。実績となるよう、しっかりとこなしたい」と話す。
DSCを運営するNPO法人・大阪精神障害者就労支援ネットワーク(JSN)は、就労意欲のある精神障害を持つ人の思いに応えるため、精神科医ら有志が中心となり07年に設立された。
JSNの茂木省太統括施設長(42)は「デジタル化の進展で障害を持つ人の活躍の幅は広がる。今後、地方の行政や図書館、病院などからの業務受注につなげて事業を軌道に乗せ、地域の他の事業所も巻き込んでいきたい」と展望を語った。【藤河匠】
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