世界が注目した“攻防” 美術館入りたかった黒猫に感謝 広島・尾道

2025/12/08 06:45 

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 広島県尾道市の数ある名所の中でも、観光客に最も人気の千光寺公園内に尾道市立美術館はある。和風の本館と、安藤忠雄さんが設計したガラス張りの新館は公園のシンボル的な存在だ。8年前、この美術館が世界的に注目を集めた出来事があった。

 2017年3月、美術館の隣のレストランで飼っていた雄の黒猫ケンちゃんが館内に入ろうとし、警備員の馬屋原定雄さん(75)が「入られんよ」と阻止した。その“攻防”を学芸員の梅林信二さん(59)が公式ツイッター(X)に投稿したところ、瞬く間に世界に広がったのだ。

 それ以来、梅林さんはケンちゃんと翌年から同じように館内に入ろうとした茶トラのゴッちゃん、そして美術館から一望できる尾道水道の写真を毎日投稿した。当初2000人弱だったフォロワーは13万7000人に。特別展でも猫のイメージを押し出し、入館者は15年度の3万人から22年度は過去最多の7万人超になった。

 今年9月、美術館の顔だったケンちゃんが病死した。梅林さんは、いつものXの投稿に「ケンちゃんとの日々、決して忘れません。ありがとう」と言葉を添えた。

 取材の日、2人に写真撮影をお願いすると、梅林さんは「こういうのはどうですか」と言って、いつも入り口にあるケンちゃんとゴッちゃんの置物を持って現れた。美術館には、猫たちへの感謝の気持ちが息づいている。【関東晋慈】

毎日新聞

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