神戸市中央区のマンションで８月、住人の女性会社員（２４）が刺殺された事件で、神戸地検は１１日、無職の谷本将志容疑者（３６）＝住居不定＝を殺人やストーカー規制法違反などの罪で起訴した。事件当時の精神状態などを調べる３カ月間の鑑定留置で、刑事責任を問えると判断した。

　起訴状などによると、被告は８月２０日午後７時２０分ごろ、被害女性が住むマンションのエレベーター内で、女性の胸などをペティナイフで複数回刺して殺害したとされる。死因は失血死だった。帰宅する女性の後をつけ、オートロック式の玄関を一緒に入る「共連れ」の手口でマンションに侵入していたという。

　さらに被告が事件の２日前から、出勤する女性を尾行したり職場付近で出入りを見張ったりしていたことも確認され、地検はストーカー規制法違反などの罪も起訴内容に含めた。被告の認否は明らかにしていない。

　捜査関係者によると、被告は事件当日に神戸市内でナイフを購入していた。兵庫県警の調べに「言うことを聞かせようとしたら叫ばれたので刺した」と供述。ストーカー行為などは認める一方、殺意については「あったかは分からない」と逮捕時に話していたという。

　被告は当時、東京都内の運送会社に勤務しており、休暇を取得して神戸に滞在。被害女性の職場に近いホテルで宿泊していた。女性のことを「全く知らない人だった。好みのタイプだと思い、後をつけていた」などと県警に説明したという。

　起訴を受けて女性の遺族は代理人弁護士を通じ、「娘がいない日常に慣れることはありません。さみしさや悔しさが襲ってきて涙が止まらないことがあります。せめて被告には最大限厳しい処罰を受けてほしいというのが今の思いです」などとするコメントを出した。【前田優菜、木山友里亜】