災害時の土砂ダム、無人で対応できるロボット開発 大阪工大など

2025/12/13 09:45 

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 大阪工業大・大須賀公一教授(ロボット工学)らの研究グループが、地震や豪雨で山腹が崩落し、土砂が川をせき止める災害「河道閉塞(へいそく)(土砂ダム)」に対応するロボットシステムを開発した。ヘリでロボットを現地に運び、緊急踏査や応急排水などを行って決壊を防ぐ。危険な現場で人が行っている調査や工事を無人化する試みだ。2030年を目標に実証機の開発を進める。

 河道閉塞は紀伊半島豪雨(2011年)や能登半島地震(24年)などで発生し、下流の住民が長期避難を強いられるなど深刻な被害をもたらした。今回のロボット開発は、挑戦的研究で社会課題を解決する国の施策「ムーンショット型研究開発制度」の一環で実施し、全国の大学や企業が参画している。

 大阪工大・枚方キャンパス(枚方市)で11月27日に試験機が公開された。ヘリで運ぶ想定で、コンテナ(高さ約1・8メートル、幅1・6メートル、奥行き1・7メートル)に複数のロボットをコンパクトに収納。コンテナの扉が開くと、搬送用ロボが凸凹の地形を自走できる踏査用ロボを載せて出発し、移動先で分離した。次に別のコンテナから排水用ロボを載せ直して移動し、巻いた状態のホースを約20メートル伸ばした。いずれも遠隔操作で行われた。

 河道閉塞ではたまった水を速やかに排出し、決壊や土石流を防ぐ必要がある。発生場所の多くは接近や現状把握が難しい山間部で、無人ロボならば空路で搬入し、人員の2次災害も防止できる。

 今回は機械設計の発想も転換した。突発的な災害の現場はあらかじめ動作環境を設定できない。そこで「環境と闘わず柔らかく解決する『開いた設計思想』」(大須賀教授)に立ち、ロボットを現場で柔軟に組み合わせて動かす分離・合体方式を編み出した。

 研究グループでは今後、ロボットを大型化したうえで3トンのコンテナに収め、AI(人工知能)を活用してカメラやセンサーで自律的に動くシステムの開発を進めるなどし、実証機の開発を目指す。大須賀教授は「阪神大震災以来、災害対応ロボットは私たち研究者が追うテーマ。近年は災害が多様化し、南海トラフ地震の到来も言われる。開発のスピードを上げたい」と述べた。【野上哲】

毎日新聞

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