売れ残った「訳あり品」専用の冷蔵ロッカー 3~5割引で販売 神戸

2025/12/13 10:45 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 その「訳あり品」、みんなで「分け合って」みませんか――。

 弁当店やパン屋、農産物直売所などで閉店まで売れ残った「食品ロス」を専用冷蔵ロッカーで預かり、アプリを通じて3~5割引で売るサービスを神戸市のアプリ開発会社が始めた。最後まで残った商品は生活困窮者向けに無料提供する仕組みも導入する計画だ。

 売れ残りそうな食料品をアプリを通じて格安購入する「フードシェアリングサービス」は近年注目を浴びている。今回のアプリを開発した「CiPPo」(神戸市)によると、店舗の営業が終わった後も冷蔵ロッカーを活用して食料品を受け取れるサービスは全国初という。

 サービスの名前は「wakeatte(ワケアッテ)」。11月に神戸市西区の市営地下鉄西神中央駅に19の収納スペースがある冷蔵ロッカーを設置した。

 「CiPPo」は全国の自治体と連携して住民向けアプリを手掛けている。横山哲也社長(47)は、以前手掛けていた飲食店で毎日大量に余った食品を廃棄していた経験から地域で分け合う方法を模索していた。だが、営業中の安売りや店頭での無料提供ではブランド価値の損失や一般客の不公平感にもつながることが課題だった。

 そこで、冷蔵ロッカーを通じた食品ロスの仲介サービスを考案した。店の営業終了後に残った食品をロッカーに入れてもらい、専用アプリからネット決済した購入者が取り出す仕組みだ。ロッカー内の保管期限は3時間で、最後まで残った食品は次に入れる店に廃棄してもらう。

 年内には保管する最後の1時間は、児童扶養手当の受給者やひとり親世帯などが無料で食料品を受け取れるようにする。市に登録から3カ月間有効の専用アカウントを取得できるQRコードを提供し、相談窓口に訪れた人のうち市が生活に困窮していると判断した人に渡してもらう仕組みだ。

 西神中央駅に設置したロッカーの協力店舗は約20店からスタート。ほとんど広報していないものの、既に2900人がアプリで利用登録したという。農協の直売所の「朝採れ野菜」売り場で前日収穫して売れ残った野菜の詰め合わせなどが人気といい、今後も市内のニュータウンや商店街などで協力者を募る。

 商品は最大半額引きとなるが、ロッカーの売り上げの6割は店舗に支払われる。一般的に3割とされる食材の原価を賄えるように設定した。横山社長は「食品を扱う店でロスが出るのは避けられないが、作り手からすれば誰だって捨てたくはない。原材料費が賄えるなら新商品作りにもつなげられる。消費者や生活困窮者のニーズを全て満たすことができ、誰も損をしない仕組みでは」とアピールしている。【稲生陽】

毎日新聞

社会

社会一覧>